■ 9,999件の投稿があります。 |
【9739】 |
メルカトル (2017年03月17日 22時08分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『デッドマン』 河合莞爾 良くも悪くもデビュー作らしく、初々しい印象を受けた。とは言うものの文章はかなりの熟練ぶりを見せ、とても読みやすいのは褒められるべき点だと思う。一方警察小説として、序盤は専門知識などを駆使しての書きっぷりは素晴らしいが、中盤以降は捜査状況を含めてやや端折り気味な点が気になるところである。 それよりもむしろデッドマンが蘇るパートのほうにより惹かれるのは、人情というものだろう。少ないページ数とは言え、少女とのふれあいや介助猿カプとの交流はなぜかしら心に残る。 だが、かの『占星術殺人事件』に真っ向から挑んだと言われるアゾート殺人に関しては、正直あまり感心しない。どうせネタは割れているのだから、信憑性も乏しく、その背景にある動機もいかにも弱い。当然、歴史に残る名作とは比較するのもおこがましいと言えるだろう。 特捜班の面々はアクの強さこそないものの、いずれも個性的で続編が書かれるのも理解できる。勿論、今後期待できる新人には違いないと思うが、例によって妙な方向へ進まないことを祈っている。また、この人には警察小説ばかりでなく、名探偵が活躍する物語も書いて欲しいものである。 |
|||
【9738】 |
メルカトル (2017年03月17日 22時06分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『キマイラの新しい城』 殊能将之 残念ながら、どこが面白いのかさっぱり分からなかった。私の読者としての読解力が足らないのか、総合的に評価の高い書評家のみなさんの鋭い批評が的を射ているのか、多分両方だと思うが、いずれにしても私のレベルの低さが露呈した結果になったようだ。 エドガーが憑いた江里が、自動車やバイク、テレビ、六本木ヒルズを目の当たりにして、とんでもない感慨を抱く辺りはかろうじて面白かったが、ミステリとしての魅力にいささか欠ける気がしてならない。どうでもいい描写が長くて、肝心の殺人事件に関する記述があまり詳述されていなかったりして、肝の部分がおろそかになってはいないだろうか。 迷探偵の石動も相変わらずのらりくらりの推理を繰り返すばかりで、どうにも本格ミステリとして、締まりがなさすぎる気がする。 私も一書評家として、この作品はミステリ読みの方々にお薦めできない。それはわずかに残っている己の矜持が許さないのである。本作が絶版になっているのも、それなりの理由があってのことのような気がしてならない。 |
|||
【9737】 |
メルカトル (2017年03月17日 22時04分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『僕と『彼女』の首なし死体』 白石かおる 愚かなことに、最近まで私はこの作品の存在を知らなかった。だが知ってしまったからには、そしてそのタイトルを目にしたからには読まない選択肢はなくなった。 本作は第二十九回横溝正史賞優秀賞受賞作である。意外なことに、選考委員の中で最も評価が高かったのは北村薫氏だったそうだ。読んでみれば分かるが、この作風やストーリーから氏の称賛を受けるとは考えにくいのである。私は少しだけ北村氏を見直した、と同時にちょっぴり好きになった。 物語は「ぼく」こと白石かおるが女性の生首を、ハチ公の銅像の前にひっそりと置き去るところから始まる。実にセンセーショナルな出だしで、その後の展開を期待させるが、全くミステリらしいところはなく、「ぼく」の会社での活躍ぶりや人間関係が乾いた筆致で描かれるばかりである。これは果たしてミステリなのか、という疑問が頭をよぎる頃、ようやくらしさを発揮し始める。 「ぼく」は実に冷静で物に動じない、浮世離れした人間性を持っており、そこに違和感や嫌悪感を覚える人は読まないほうが賢明だ。逆にそれが許容できるのであれば、一度読んでみるのも面白いと思う。 取り敢えず、終始一貫して興味の的はなぜ彼は冒頭のような異様な行為を行ったかというホワイダニットである。それは、あっと驚くような理由ではなく、うーむと思わず唸ってしまうようなものであり、それだけに余計に腹に響く感がある。 いずれにしても、本作は他のどの作品にも全く似ていない、独自のオリジナリティを持った作品と言えそうだ。少なくとも、私の乏しい読書経験からは本作を彷彿とさせるようなものは見当たらないと言ってよいだろう。なかなか面白い作家となりそうな予感もする。 |
|||
【9736】 |
メルカトル (2017年03月17日 22時03分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『楽園都市』 本堂圭一 典型的なサバイバルゲーム。しかし、残虐な殺戮シーンや民衆パニックなどは皆無である。 ある日主人公の少年の元に、楽園都市と名付けれたユートピアへの招待状が届く。誘われるように楽園都市へと向かうのだが、そこで少年のクラスこそ違うが同級生の少女と出会う。そしてもう一人、少年の幼馴染で剣豪の少女と三人で、このサバイバルゲームに立ち向かうのだが・・・。 中盤で山場を迎えるが、ここはなかなか読み応えがあって雰囲気を出している。意外な事実を知らされたりもして、ちょっといい感じである。終盤でもう一山あると想像していたが、トーンダウンしてラストを迎える。消化不良気味であるのは否めない。 全体的に設定が安直で、いかにもお手軽感が満載といった感じもする。要するに深みが足りないのである。文体も平板で、逆に読みづらいというか、頭を素通りするような感覚であった。面白くないかと言えばそうとも思わないが、インパクトに欠けるのは間違いないであろう。 |
|||
【9735】 |
メルカトル (2017年03月17日 22時01分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『よろず占い処 陰陽屋へようこそ』 天野頌子 占い、失せ物探し、加持祈祷、霊障相談などを看板に掲げる、インチキ陰陽師が店主の陰陽屋。その店主こそ、元カリスマホストの眉目秀麗、腰まで届きそうな長髪の安陪祥明である。本作は彼と陰陽屋のアルバイトで、妖狐の中学生沢崎瞬太のコンビが活躍する、いわゆる日常の謎を扱った、極めて薄味のミステリだ。 ミステリと言っても、どちらかというとライトノベルの要素が強く、二人の人間関係のほうに重きを置いているので、若年層向けの軽い読み物となっているようだ。しかし、老若男女を問わず広く読まれているようだし、ドラマ化までされているわけで、世間的には思いのほか好意をもって受入れられている作品の模様である。一般読者にとってはディープな本格ミステリよりも、こういったライトで低刺激な物語のほうが喜ばれるのは確かなことだろう。 だが無論、本格ファンが読むべき作品ではない。私のような悪食ならば、話のタネに読んでみても良いかもしれないが、当然、強烈な印象は残らない。畢竟、本作はほのぼの系のごく軽量級ミステリだと考えられる。 それにしても、やはりミステリ読みから見ると、これだけシリーズが何作も上梓されているのは、首を傾げざるを得ない。これだけ人気を博しているにもかかわらず、私にはそれ程魅力は感じられなかった。ミステリ作家ならこんな書き方はしないだろうみたいな箇所が、いくつも散見されるのももどかしい。 |
|||
【9734】 |
メルカトル (2017年03月17日 21時58分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『配達あかずきん』 大崎梢 何と言っても、表紙のイラストがとても雰囲気が出ていて好ましい。ずらりと並んだ書籍は白一色で統一されており、ところどころに使われているワンポイントの色彩が印象的である。見ているだけで、思わず書店へ行きたくなってしまう。 肝心の中身は、帯に謳ってあるように、本格書店ミステリの名に恥じないものであると思う。第一話の『パンダは囁く』が出色の出来だろう。他はまあどれも平均的に面白いが、あまりピンとくるほどのものではなかった。シリーズ化する気持ちも分かるが、書店の店員やそれに準ずる仕事をされている方以外の一般人、つまり我々からすると、それ程深い興味を持って読まれないのが普通の感覚ではないだろうか。とは言うものの、書店員の日常がうっすらと想像できて、少しは勉強になる面もある。 キャラ設定に関しては、確かにあまり魅力的とは言えない。主役の二人、杏子と多絵からしてこれといった特徴が見られないので、その意味では若干損をしていると思う。以後のシリーズではその辺り改善されていると良いのだが、この作者の淡々とした書きっぷりを見ていると、あまり期待できない気がするが。 |
|||
【9733】 |
メルカトル (2017年03月17日 21時56分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『ハーモニー』 伊藤計劃 面白いか面白くないかと言う基準ならば、断然面白くない。どれだけの賞を受賞し、読者から絶大な支持を得たか知らないが、私にしてみれば、所詮SFなんてこんなものかとしか思えなかった。ただし、私はすこぶる頭が悪いし、IQも低いので、その点を考慮に入れるとこの評価はいささか怪しいとも言えるかもしれない。 しかしながら、この観念小説のようでもあり、とてもエキサイティングとは言えない小説を褒め称える気にはなれない。例えば、一生懸命読んでいても、途中誰と誰の会話か分からなくなったり、今誰が話しているのか判然としなかったりすることはないだろうか。或いは、相当クセの強い文章が読みづらかったりはしないだろうか。 そして、一体なぜミャハはあのようなとんでもない犯罪を実行しようとしたのか、その動機があまりに抽象的過ぎて私には理解できなかった。 それにしても、SFファンというか読者は、こういった難解な小説が大好きな人種なのだろうか。本作が面白い、または素晴らしいと言えるのであれば、ミステリファンに転向すればどれだけ興奮を抑えきれないような体験ができるか分からないと私は思う。 この経験を戒めとして、私は当分SFを読まないだろう。もしかしたら一生読まないかもしれない。最早SFの世界に私の求めているものはないのだから。 |
|||
【9732】 |
メルカトル (2017年03月17日 21時54分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『放課後探偵団』 アンソロジー これこそ粒ぞろいと呼ぶにふさわしい学園ミステリ珠玉の短編集。しかし、みなさんタイトルで敬遠されてはいないでしょうか?読んでみればそれが杞憂に終わると思うので、どのジャンルが好みとかに拘わらず、多くの方に読まれることをお勧めしたい。 それぞれが他愛無い、或いは些細な日常の謎を扱っているが、それを端正なロジックで攻めて、スッキリと解決に導いている辺りはとても好感が持てる。似鳥氏のトリックだけはちょっとややこしいが、まあ私の頭脳がついていけなかっただけで、問題ない。 各キャラもふとしたしぐさや言葉に個性が出ていて、よく描かれているので、ライトな読み物としても合格だろう。特に、それぞれの物語に登場する女子は魅力に溢れていて、読んでいてほのぼのとした気分にさせてくれる。 各短編が際立った特徴を持っていて、違った色の光を放っているが、最後の最後で梓崎氏にもっていかれた感が半端ない。掉尾を飾るに相応しい作品だと感じる。途中まではあまり好みではなかったが、見事な反転でやられた、いや本当に参りました。 |
|||
【9731】 |
メルカトル (2017年03月17日 21時52分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『○○○○○○○○殺人事件』 早坂吝 この採点はひとえに一発勝負の大仕掛けに捧げられるものである。よって、それを除けばせいぜい4点程度の平凡な作品と思われる。それにしても、これは史上まれに見る下品というか、お下劣な作品だ。それはチープな表紙によく表現されている。人によっては、そういった低俗な作風が許せないという方もおられるかもしれない。かく言う私も、エログロは決して苦手ではないが、本作に対してはあまり好感を持ってはいない。だが、あのバカミス的大トリックがいかにもインパクトが強く、一概に貶すわけにもいかないわけである。 私もやはり、前半のごたごたが冗長に感じられて、せめて島に到着するまでのシーン全体を、半分以下にカットしていただきたく思った。それと、大袈裟にタイトル当てみたいなお遊びをさも凄いことのように喧伝しているが、大した意味はなかったと感じる。 さて、この作者、果たして私が予想するような一発屋なのか、それともさらに一皮むけた大物に化けるのか、いずれにしても次回作を楽しみにしたいと思う。 |
|||
【9730】 |
メルカトル (2017年03月16日 22時22分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『COVERED』 森晶麿 どことなくよそよそしい文章が好みではないが、孤島物としてはまずまず合格点ではないかと思う。 構造は本格ミステリだが、サスペンスの要素も多分に含まれている。その割には緊迫感が感じられず、考えてみればかなりの苦境に立たされているにもかかわらず、意外と平常心を保っている登場人物たちが異様に思える。 通常のミステリであれば、首なし死体や生首が現れたのだから、推理合戦とまではいかなくても、犯人は誰かとか、動機は何なのかなどの論戦が繰り広げられるものだと思うが、本作においては一向にその気配もなく、議論は明後日のほうに終始しているのが訝しい。それもそのはず、この作品の白眉は、実は孤島を脱出してからなのだから。 正直、島での殺人事件が起こるまでは勿論、それ以降もなんとなく展開がもたついてスッキリしない気分だが、終盤に来てようやく本来のキレを取り戻している感がある。そこにいたって初めて本書の良さが理解できるだろう。まあ、はっきり言ってお薦めとは言えないが、孤島物が好きな人は一応読む価値はあるかもしれないね。 |
|||
© P-WORLD