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【9559】 |
メルカトル (2017年02月25日 21時49分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『虚実妖怪百物語 序』 京極夏彦 京極版「妖怪大戦争」らしいが、序というだけあって一冊丸ごとプロローグのような作品である。 妖怪関係者?の水木しげる、荒俣宏、京極夏彦ら作家陣に編集部の人々が多分実名で加わり、さらに榎木津礼二郎の子孫らしき榎木津平太郎や木場という人物まで参戦している。 本作の手法は映画『ジョーズ』に似ており、序盤に妖怪をちらつかせておいて、その周辺の出来事を冗談っぽく描いてイライラさせて、最後にぞろぞろと妖怪を登場させるという常套手段を取っている。 ただ残念なのは三人称で書かれているが、京極夏彦を京極自身がどう描くのかと言う興味を持って読んだわけだが、結局本人は本作では登場しなかったことだ。ちょっと焦らしすぎじゃなかろうか。いずれ続巻を読むのだから少しくらいサービスすればいいのにと思うが。 |
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【9558】 |
メルカトル (2017年02月25日 21時47分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『神様の裏の顔』 藤崎翔 適度なお笑い要素、平易で誰にでもわかりやすい親切な文体、すんなり頭に入ってくる巧みなストーリー展開、終盤のサプライズと売れ筋ポイント満載の傑作です。 舞台は通夜での焼香、通夜ぶるまいの席、親族控室とどこか辛気臭い感じもしますが、それも含めて雰囲気は悪くありません。元教師で誰からも慕われていた坪井誠造は果たして本当に神様のような存在だったのか、をめぐって親族、店子、元同僚らが推理やディスカッションを繰り広げます。すると次第に故人の裏の顔が浮かび上がってくるという仕組みになっていますが、果たして・・・。 終盤までは各語り手が遭遇する事件が披露され、そこから二転三転、とんでもない反転が繰り返されます。最後の最後まで飽きさせることなく面白く読ませる手腕は確かなものがあり、今後の活躍が期待される新人の登場です。 |
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【9557】 |
メルカトル (2017年02月25日 21時45分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『美人薄命』 深水黎一郎 独居老人宅に、月二回お弁当を配達するボランティアに励む大学生総司と、片目が見えない老女カエとの交流をほのぼのと描いた青春ミステリ。終盤までミステリ要素が薄く、文芸に近い作品かと思っていたら作者の企みにまんまと引っ掛かります。実は冒頭からトリックが仕掛けられており、何気ない日常が伏線になります。 ボランティア団体、ひまわり給食サービスで偶然再会したかつての同級生に何とか接近しようと試みたり、宅配先の老人たちの様子や出来事をちょっとしたユーモアで包むように描いてみたり、カエの戦時中の辛い過去がカットインされていたりと、読者を飽きさせない工夫がされています。巧みな構成で物語全体に変化をつけています。 所々、涙を誘うシーンなどもあり、ガチガチの本格ミステリで疲れた頭をほぐす意味で一読の価値ありと思います。色々考えさせられる作品でもありますね。 |
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【9556】 |
メルカトル (2017年02月25日 21時43分) |
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『入らずの森』 宇佐美まこと 山深き過疎の町、尾峨町の尾峨中学校に勤める都会育ちの教師圭介、尾峨中学に通う数少ない生徒で、複雑な家庭の事情で東京から転校してきた金髪の少女杏奈、仕事に馴染めず逃げ出すように引っ越してきた、農業を営み始めたばかりの隆夫、認知症で入院する淳子とその娘ルリ子。彼らの人生がリンクした時何かが起こる。 森の奥深くに息づくそのものの正体とは一体・・・。 地味に怖いです。ということはあまり怖くないとも言えますが、じわじわと来ます。 平家の落ち武者伝説や、過去の惨劇なども絡んできますが、それほどの緊迫感はなく、いま一つ盛り上がらないまま物語は進行していきます。ところが途中から一気に面白くなります。これがこうなって、そこから、うむそう来ますかって感じで、妙に腑に落ちる語り口が巧妙なことを遅まきながら痛感します。よく練られた構成も作者のしっかりとした実力に裏打ちされたものだと思いますし、本作が単なるフロックでないことは読んでいただければお分かりになるでしょう。 |
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【9555】 |
メルカトル (2017年02月18日 21時52分) |
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『砕け散るところを見せてあげる』 竹宮ゆゆこ ラノベです、はい。定番の学園ものですね。よくあるボーイミーツガールな感じの青春小説ですかね。 作者の優しさからなのか、読者層を考慮してなのか、最も生々しいシーンや痛々しいシーンは割愛されています。それが私には少々物足りなかったりもしますが、やはりラノベなのであまり過激な描写は避けたいところでしょう。 もしミステリに置き換えるなら、さしずめイヤミスですかね。しかし、あくまで主人公の少年少女にスポットを当てているので、作者もあまりミステリに重きを置くような意識はなかったものと思われます。 ストーリーは至って単純ですが、それよりも二人のぎこちない愛情表現が初々しく、キャラも立っているので、ラノベ読者は大満足なのではないでしょうか。もう少し捻りがあっても良かった気もしますが、まあ面白かったですよ。いきなりUFOがどうこうってのは驚きましたが、特にオチはありませんので期待しないでください。 |
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【9554】 |
メルカトル (2017年02月14日 21時52分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『葬式組曲』 天祢涼 これは文句なしの8点ですね。 タイトルからの印象は、社会派?それとも日常の謎的なジャンルかなという感じですが、第一話の『父の葬式』は確かにそうでした。しかし読み進むにつれて意外にもトリッキーな連作短編集だということに気づきます。お棺の遺体消失、祖母の火葬を何とか回避しようとする喪主、まるで本物のような幻聴などを葬式というテーマを絡めながら、見事に本格ミステリとして昇華しています。 さらに最終話での見事な回収、素晴らしいです。 デビュー作の『キョウカンカク』からは考えられないほど作風を変えて、堅実な作品に仕上げており、年齢層を超越した誰もが楽しめ納得できる傑作をものにした感が強いです。 |
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【9553】 |
メルカトル (2017年02月13日 21時57分) |
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『石黒君に春は来ない』 武田綾乃 注意!最後にややネタバレ気味の発言があります。 いわゆる学園もので、スクールカーストやいじめの実態をリアルに描いた青春小説。ミステリかどうかは読み手の捉え方次第だが、ガチガチのミステリでないことは確かです。 まあ簡単に言えば、目には目を、歯には歯を、スマホにはスマホをという感じでしょうか。しかし、恐ろしいですねスマホ社会は。かのベ○キーの不倫騒動もこのアプリから流出したのがきっかけでした。 主人公のクラスには女王様とその取り巻きが存在しており、その女王様のいじめを受けて一人の生徒が自殺未遂?事件を起こします。その最上位のカーストに対して、誰がどのように立ち向かうのかが読みどころになります。しかし、それはいじめと言うより、女王様の身勝手な発言により狙われた生徒が次々と傷ついて不登校になるというもので、それほどハードなものではありません。そこが個人的には生ぬるいというか、いまひとつ逆襲のカタルシスが得られない要因となってはいますね。 例えば、北乃きい主演のドラマにもなったコミックス『ライフ』にも設定が似ていますが、こちらは一人の生徒を徹底していじめ抜くわけで、立場が逆転した時の爽快感は段違いです。 本作は終盤でようやくミステリとして機能します。やや意表を突かれますが、それほどのサプライズとは思いません。しかし、孤立した女王様を追い詰めるシーンは読みごたえがあります。 |
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【9552】 |
メルカトル (2017年02月10日 22時11分) |
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『がん消滅の罠 完全寛解の謎』 岩木一麻 第15回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。 がんの成り立ちから治療法、寛解や医療全般に関する記述が多くを占め、肝心のストーリー性、ドラマ性、キャラクター造形などがおろそかになっているきらいがあります。また文章に色気が感じられず、お世辞にも上手とは言えません。「お前が言うな」というご意見は承知の上で。 正直、この作品が賞金1200万円とはねえと思います。まあ勉強にはなりますし、一応がん消滅の謎は理論的にというか、医学的に頷けるものでしょうが。 終盤の畳みかける展開はそれなりに読みごたえがあり、逆に言えばそれがなければもっと評価は下がったと思いますね。 |
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【9551】 |
メルカトル (2017年02月08日 22時05分) |
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『虹を待つ彼女』 逸木裕 第36回横溝正史ミステリ大賞受賞作。 渋谷スクランブル交差点を見下ろすビルの屋上で、ドローンによる劇場型自殺事件を起こした晴。晴と同棲していたという謎の人物、雨。晴の過去を探るうちに次第に彼女に惹かれていく人工知能の研究者で主人公の工藤。工藤が開発した人工知能スーパーパンダとの囲碁対決に賭ける棋士目黒。これらの人物が混然一体となって織りなすファンタジックな佳作。 SF、ミステリ、ファンタジー、ハードボイルド、恋愛小説の要素を混ぜ合わせたような作品です。しかも新人とは思えない確かな筆力と構成力。大変面白く読ませていただきました。 2020年という近未来の東京が舞台だが、現在とさほど変わりはなく違和感はありません。突き詰めれば恋愛小説なのでしょうが、ラノベを愛する読者にも受け入れられそうな作風です。この人はどの方向に向かうのか未知数ではありますが、何を書かせても難なくこなせそうな気がします。まだまだ上を目指して活躍できる人材だと思います。 |
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【9550】 |
メルカトル (2017年02月07日 22時16分) |
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『あなたのための誘拐』 知念実希人 Amazonでは何故か異様に高評価の本作。ですが、私にはそれ程までとは思えませんでした。確かに力作でしょうし、テンポもいいですが、特に秀でている点も見られませんし、トリックも小振りな感は否めませんね。尚、ネタバレ気味のレビューがありますので、読む前にAmazonで下調べをするのはやめたほうが賢明だと思います。 4年前、身代金を背負った特殊班の刑事上原真悟はわずか12秒指定の場所に間に合わなかったために、誘拐された少女を殺害されるという煮え湯を飲まされていた。誘拐犯の名はゲームマスター。そして今、またしてもゲームマスターからの指名により刑事を辞めた真悟が身代金の運搬役として駆り出されることになる・・・。 第一章ではゲームマスターが出す「クイズ」により東京中を引きずり回される真悟の姿が描かれており、誘拐物特有の緊張感がよく伝わってきます。 第二章はゲームマスターの正体に迫る真悟の活躍が描かれます。 単純に誘拐を扱っただけの作品ではなく、様々な要素が物語を彩り、辿り着きそうで辿り着けない真犯人は果たして誰なのかが主題となります。小物の使い方も上手く、何気ない描写がのちのちに生きてきたりしますので、油断できません。 |
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