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【9659】 |
メルカトル (2017年03月09日 22時15分) |
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『〔映〕アムリタ』 野崎まど これは激しく読者を選ぶ作品であろう。そのひとつは、最原の天才性を肌で感じることができるか、或はそれに共感できるかどうかで決まるとも言えそうである。ちなみに私は選ばれなかった者だ。 どれだけ最原が映画で何でもできる天才だとしても、実際作品の中ではその具体性が全く描かれていない。ただただ表層をなぞるのみで、その現象の一部をさらりと表現しているに過ぎないではないか。これでは、驚愕に値するような天才と認めるわけにはいかないし、彼女をどうとらえていいのか判断できない。 一方、本作は映画製作にかかわる若者たちの群像劇の面も持ち合わせているが、誰も彼も中途半端にしか描かれていないし、映画に関連するコアな部分を鋭く抉っているわけでもない。いずれにしても、個人的には褒められた出来ではないなと思う。また、贔屓目に見てもミステリではないだろう。 |
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【9658】 |
メルカトル (2017年03月09日 22時14分) |
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『究極の純愛小説を、君に』 浦賀和宏 なるほど、これが浦賀流メタミステリなのか、このように書くとどれだけ凄い作品かしらと思われるかもしれないが、実際大したことはない。 作品の性質上、ストーリー展開などは紹介すべきではないと思うので、ここでは書かない。まあ興味があるなら読んでみても悪くはないが、無論私にはその出来に対して責任はとれないのであしからず。 二点だけ、気になる個所があったので、少しだけ触れて終えようと思う。 一点目。アメリカン・ニューシネマとして『俺たちに明日はない』『イージーライダー』『タクシードライバー』が挙げられているが、『タクシードライバー』は除外されるべきであろう。確かに内容的にはそれに近いものがあるが、年代が違うし同じ俎上で語られるのは間違いである。 二点目。『スターウォーズ』と『エヴァンゲリオン』を比較検証されているのは、なかなか面白い試みだと感じた。ただ、本作自体がこれらの論点を踏襲していたならもっといい作品に仕上がったのではないかと思うと、少々残念である。 |
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【9657】 |
メルカトル (2017年03月09日 22時12分) |
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『大幽霊烏賊 名探偵 面鏡真澄』 首藤瓜於 昭和初期、舞台は愛宕市(おたぎ)の精神病院。この設定がのちのち効いてくるのだが、詳細はネタバレになるため控えたい。 主人公の使降はまだ建てられて年数の浅い精神病院、葦沢病院に赴任してくる。だが、医師たちばかりか看護婦たちまでも、一癖も二癖もある人物ばかり。更に入院患者の中には「三○人」と使降が呼んでいる一風変わった人たちがいる上、「黙狂」という彫像のように動かない患者もいた。いったい彼の正体は?というのが、全編を通じての大きな謎になっている。 他にも、巨大鯨を襲う超巨大烏賊、漁船に一人取り残された漁師の異常な行動、クラシック音楽の薀蓄、周りの男たちを籠絡しようとする美人看護婦、後頭部に穴の開いた男などなどの要素が絡み合って、一種異様な世界観を作り出している。しかし、全体的な雰囲気は決して暗いものではなく、何事にも前向きに対処していこうとする主人公に引きずられて、最後まで飽きずに読むことができる。 なんだか小難しそうな内容に感じるかもしれないが、そんなことはなく、言ってみれば総合小説としてのエンターテインメントと呼んでもよいのかもしれない。無論、ミステリとしての体裁も整っている。 やや残念なのは、名探偵と謳われている面鏡真澄の出番が少なすぎることだろう。 |
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【9656】 |
メルカトル (2017年03月09日 22時08分) |
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『ようするに、怪異ではない』 皆藤黒助 鳥取県は境港市、主人公の「俺」皆人はこの街に引っ越してきた、新高校一年生。「俺」は特に望まずして妖怪研究同好会に入会することになった。二年生の部長である春道兎鳥はささやかではあるが不可思議な事件を、ことあるごとに妖怪の仕業と断言するが、「俺」は勿論犯人は登場人物の中にいると推理し、これらの事件を怪異などではないことを証明する。 というのが大筋のストーリーで、連作短編なのだが、どれもパターンとしては似通っている。事件そのものはそれほど魅力的なものではないが、どことなく現実離れしていて不思議さが漂う。 文体としてはライトノベルに近く、軽いノリのミステリである。まあ最近流行りの、と言ってもいいだろう。おそらく続編も書かれるのだろうが、そちらを読んでみてもいいかなと思わせるだけの何かを持っているとは思う。 |
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【9655】 |
メルカトル (2017年03月09日 22時07分) |
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『涼宮ハルヒの消失』 谷川流 なかなかの大風呂敷を広げて、どう着地させるのかと思いきや、ごくありふれたもので全く新味がなかったのはどうなのか。 これは最早ミステリですらない。少なくとも「日本最高峰のミステリ」でないことは断言できる。本来なら4点以下だろうが、キャラ立ちを考慮し青春小説として評価してこの点数とした。もし本作に9点或いは10点を付けたら、私の平均採点数は8点以上になってしまうからね。 |
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【9654】 |
メルカトル (2017年03月09日 22時05分) |
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『涼宮ハルヒの憂鬱』 谷川流 ラノベ事情に疎い私でもタイトルくらいは知っている、巷で評判の超有名作。なのだが、正直いまいちピンと来なかった。 序盤はよくある学園ドラマかと思ったら、途中からとんでもない展開になる。想像するに、なんだか絵的には凄いことになっているのだが、文章がこなれていないためか、どうにも伝わってくるというか迫ってくるものが足りない感じである。 各所に萌え要素がてんこ盛りで、その意味では読者を満足させるのは間違いあるまい。ただ、それを楽しめるかどうかは、各々の嗜好によるだろう。しかしこれだけは言える、私にとっては噂にたがわぬ名作とは思えないと。まあそれも、シリーズ全作を読破しなければ断定はできないのかもしれない。だが私もそこまで暇ではないので、無理というものである。 |
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【9653】 |
メルカトル (2017年03月09日 22時04分) |
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『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』 七月隆文 ストーリーとしてはごく普通の恋愛小説で、特筆すべき点はない。だが、大胆なSF的仕掛けにより、読者を日常と非日常の狭間に追い込み、これまで体験したことのない世界に誘う。 情感あふれる文体と上品な文章は私好みではあるし、色んな意味で良質の恋愛小説と言えよう。 ジャンルとしてはミステリではないと思う。ファンタジー寄りの恋愛小説ってところじゃないだろうか。まあ『イニシエーション・ラブ』が堂々と本格ミステリとして登録されているのだから、本作がひっそりとここにいても悪くはないのかもしれない。 でも、涙腺の緩い私だが、これは泣けなかったなー。もっと泣かせてくれてもいいような内容だっただけに、やや物足りなかった。と言うか、ちょっと薄味すぎて刺激が足りない気がした。 |
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【9652】 |
メルカトル (2017年03月09日 22時00分) |
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『こわれもの』 浦賀和宏 これは本格なのかサスペンスなのか。どちらとも取れる不思議な作品である。 これほど登場人物がうまく配置され、バランス感覚が優れているミステリはあまりお目にかかれない。必要最低限に抑えて、最大限の効果を狙う作者の姿勢は見事としか言いようがない。 また先の見えない展開に振り回されて、無心で読める優れものである。それだけにとどまらず、ツボを押さえた逆転劇やひねりの効いたオチも読み応えがある。小ネタだがトリックもよく考えられていると思う。 |
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【9651】 |
メルカトル (2017年03月09日 21時59分) |
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『掲載禁止』 長江俊和 なかなかの力作ぞろいの短編集、十分楽しめた。 殺人や自殺など、人の死の瞬間を目の当たりにできるバスツアー、別れた恋人に未練を持つ女が、ひそかに作っていた男のマンションの合鍵で留守中に侵入し、それがやがてエスカレートしていく物語など、相変わらずいかがわしさ満載の作品ばかりである。そうしたちょっと風変わりなストーリーが好きな読者には堪らない短編ばかりなので、嗜好が合えば嵌ること請け合いである。 臨場感、緊迫感も申し分なく、多分誰も読まないと思うけど、結構お薦め作品だと個人的には思っている。いずれもちょっとした反転を味わえるし。 |
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【9650】 |
メルカトル (2017年03月08日 22時21分) |
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『よろずのことに気をつけよ』 川瀬七緒 これはいけません。 面白味のない文章に乗せて綴られる、男女の犯人探しの旅。そこに呪術という要素を取り込んで、淡々と語られるストーリー。一見面白そうに思われるかもしれないが、無味乾燥な文体でイマジネーションがかき立てられることもなく、正直ずいぶん退屈であった。 殺人事件そっちのけで被害者の過去を探るのに終始しているが、これといった盛り上がりもなく、最後に明かされる犯人と真相は至ってありきたりなもので、脱力感を覚える。ストーリー自体もごく単純で、これだけのボリュームにする必要性は全くなかったのではないかと思う。 一人称の文章だが、主人公が自分のことを僕と呼んでいるのには違和感を覚えるし、読んでいて三人称と錯覚するほど、心情が語られていない。 これだから乱歩賞は・・・と愚痴も言いたくなるというもの。 すみません、思ったことを正直に書くたちなので、反感を覚えた方もおられるかもしれませんが、どうかご容赦下さい。 |
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