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【395】

【 2- 12 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時47分)





「ホームレスにギター教えてもらった思い出」




店にはもう一人いた。彼女の妹だった。彼女の妹はなんと俺と同い年。縁を感じざるを得なかった。 


それから夏休みに入った。夏休みになると流石に勉強しなければいけなかったからジジイと彼女に会う時間は減った。 


1週間に2日だけ。その時を全力で楽しんだ。 



夏休みのある時。 


ジジイ「お前の歌な。なんか違和感あるんだよ」 


歌は全て耳コピ。英語の意味なんて知らなかった。 


さくら「私も感じてました」



ジジイと彼女は考える…ふりをしてた。 


ジジイがわざとらしく手を叩いて言った。 


ジジイ「英語だ。こいつは英語喋ってねえんだ」 


彼女も大きくうなずいた。正直文法英語は苦手だった。文系な俺は数学は論外だったが英語も少し苦手だった。 


俺「あー確かにそうかも。英語苦手じゃけえ」




 
 
【394】

【 2- 13 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時46分)





「ホームレスにギター教えてもらった思い出」




ジジイ「それじゃあ意味ねえじゃねえかwww」 


ジジイはガハハと笑ってまた肩を叩いた。彼女の前でそんな1面見せたくなかったから恥ずかしかった。

というより聞かせたくなかっただな。 



ジジイ「それじゃあギターはだいぶ出来るようになったけえ英語を教えるか」 


俺「は!?なんでここが学校になるんだよ!」 


ジジイは手を出して首をゆっくりふった。 


ジジイ「俺は学校教育みたいな情けねえ英語は教えねえ。発音と慣用句。これだけで英語は喋れる」





ジジイはそう豪語した。彼女はギターをポロンと弾いて 


「めくらな私でも日常会話は出来るよ!頑張ろ?」と言ってくれた。この時始めて彼女が英語を喋れることに気付いた。 


益々惚れたがジジイも英語を喋れることに驚いた。確かに発音は良かったけどまさか喋れるなんて… 


かくして中学生の俺。ホームレスのジジイ。盲目のさくら。こんな変な3ピースはギターに打ち込んだのだ。







 
 
【393】

【 2- 14 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時46分)





「ホームレスにギター教えてもらった思い出」





そこからは変な日常が始まった。

ギターのトレーニングの前に発音の練習からだった。歌詞を見させられジジイと付きっきりで発声。

恥ずかしい上に意味不明だった。 


でも文法があーだとか単数がーとか全く無かった。ジジイ…発音上手い…何もかもジジイに負けたと思った。 


夏休みの間ほとんどそうだった。そして夏休みが明けたとき、俺はこのトレーニングによって新たな効果を実感した。 


二学期が始まってすぐテストがあった。それなりに勉強してたから大丈夫だろうと思ったけど少し不安だった。



でもその時の英語のテストである変化がおきた。俺はリスニングが得意じゃなかった。 


英語が分かる!聞き取れる! 


自分でも恐ろしく解けた。結局蓋を開ければ学年3位までになっていた。 


幸せだった。変な意味でのリア充。それも嬉しかった。人と違うことをしている自分も好きになっていった。 


この結果に親父はもちろん姉貴やジジイ、彼女も喜んでくれた。彼女はCDをくれた。


クリームという可愛らしいバンドのCDだった。


 
 
【392】

【 2- 15 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時45分)






「ホームレスにギター教えてもらった思い出」




ここでクリームというバンドに出会ったことで俺はブルースの重要性を感じることになるのだがまあ詳しくは書かない。

あんまジジイとの関係もないし。 


ジジイはある時歌う場所を変えると言い出した。

俺にはなぜか分からなかったが多分警察がチラチラうろついていたからだろう。彼女もそれに応じて歌う場所を変えた。 


それは山の麓の公園。 


ジジイは嘆きながら 

「駅前のほうがもうかるんだがな…」と呟いた。 


山までの彼女の行き道は俺が自転車で二人乗りすることになった。





年が明けた。ジジイは結局一年間以上も俺にギターを教えてくれた。俺はあんまり上手くはならなかったが。 


年明けすぐにジジイに会ったときこんなことを言い出した。 


ジジイ「…俺はな。ホントは長居するつもりなんて無かったんじゃ」 


俺「は?じゃあどがんするつもりやったんじゃ?」 


ジジイ「旅から旅の根なし草。俺はずっとそうしてきた」 


そう言われてあることが俺の脳裏をよぎった。そのまま伝える。





 
 
【391】

【 2- 16 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時44分)





「ホームレスにギター教えてもらった思い出」






俺「…その前はなんしよったんじゃ」 


ジジイ「その前って…ホームレスに旅人になる前っちゅうこと?」 


旅人なんざカッコつけやがってw笑ってしまうぜw 


俺「そうじゃ。なんかしよったんじゃら?」 


ジジイは頭をポリポリ掻いて口を濁した。そんなジジイは珍しかった。

というより一年間も一緒にいたがジジイの身の上話は全然してこなかったんだよ。 


ジジイに興味が無かったわけじゃない。でもそれ以上にジジイから学ぶことが多かったんだ。




でも今度こそはジジイを吐かせたかった。このままじゃいつか壁になる。中学生なりに必死に考えた末だった。 


俺「はっきしせえ」 


ジジイ「あー!分かった!話す!こっちきい!」 


いつもの小屋に行くと思えば全く別の方向に歩き出した。 


俺「ちょお!どこいくんじゃ」 


ジジイ「…黙ってついてこい!」


 
 
【390】

【 2- 17 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時44分)





「ホームレスにギター教えてもらった思い出」




ジジイは悲しそうでもあり嬉しそうでもある何とも言えない表情で俺を連れる。 


ジジイ「…お前、金あるか?」 


俺「ジジイよりはあるわい」 


ジジイ「ぬかせw」 


ジジイと俺はひたすら歩いた。彼女はそこにはいない。連れていくと言えば今日は誘うなと言われた。 


着いたのは市の外れの銭湯だった。小さな銭湯だが意外と新しかった。 


ジジイ「…腹割って話そうや」 


その時のジジイはいつもより数段若く見えた。




銭湯に入って身体を洗う。ジジイはにかっと笑ってジジイの背中を指差した。 


ジジイ「お前、身体あらっちくれい」 


俺「はあ!?嫌じゃ!」 


ジジイ「ええから。損はねえぞ?」 


俺「損しかないわいw」 


そう言い合いながらも結局二人して洗った。親父以外と風呂に入るなんて始めてだった。中学の修学旅行は風邪で休んだしな。 


ややあって湯船に二人で入る。客は他に誰もいなかった。

 
 
 
【389】

 評価

さオ (2017年05月30日 19時39分)


支那 人


ってNGワードwww


ピワorz.........

 
 

 
 
 
【388】

【 2- 18 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時33分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」





ジジイ「で?何から聞きたい?」 


珍しくジジイからの質問。いや下らない質問は嵐のように受けたけど… 

俺は経歴を追うことにした。 


俺「生まれは?」 


ジジイ「満州じゃ」 


俺「は?」 


ジジイは戦前の満州で生まれたらしい。戦争中に日本に来たという。 


ジジイ「だからって俺はシナ人でもねえぞ?根っからの日本人や」 


ジジイはいつものおしゃべりになったがどこか面持ちが違った。ああこれは裸のマジの付き合いなんだなとガキながらに感じた。



ジジイ「頑張って大学まで行った。何回も死んだがましかと思ったが人生は楽しかった」 


もはや質問はいらない。俺は黙って粛々と聞いた。 


ジジイ「卒業して就職した。国鉄に入った。日本の立ち直りを支える誇りを感じながら仕事をしちょった」 


ジジイ「その時くらいやな。日本に海賊レコード言うてな?アメリカのが入ってくんねん」 


ジジイ「俺は音楽が好きじゃったけえしっかり買った。それにはアメリカの最新の音楽がつまっちょった」




 
【387】

【 2- 19 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時31分)





「ホームレスにギター教えてもらった思い出」




ジジイ「あの子がお前に持ってきたこともあるやつや」 


あの子はさくらを指していた。その時ロックの歴史ってことで色々借りたのを思い出した。 


ジジイ「俺はチャック・ベリーに心をうたれた。感動した。俺はこういうのをやらないかんち思うた」 


ジジイ「しかしなあ、ギター揃えていざっゆうてもな海賊レコードはな、音質が悪すぎるんや」 


ジジイ「ザッザッ言うしな?それで最初は諦めた。お前とおんなじや」 


そういってにっこり笑った。



ジジイ「俺はお前よりもっとひどいぞ?それから3年もギターには触れんかった」 


意外だった。ギターが大好きだと言っていたジジイの話とは思えなかった。 


ジジイ「しかしなあ、昭和の40に入るとな、周りにちょこちょこギターをするやつが出てきた」 


ジジイ「その時に俺の嫌いな同僚がギターをこうたっち聞いた。これはやるしかないと思った」 


なんか…ほとんど俺と同じきっかけな気がするんだが?言いたくてしょうがなかったがまだこらえた。




 
 
【386】

【 2- 20 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時29分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」






ジジイ「やっぱり弾けね。絶対ひけないと思った」 


ジジイ「それでもしっかり練習した。1日仕事以外はギター握っとったわ」 


このジジイが真面目に練習?それだけで俺には不思議な感覚だった。
 

ジジイ「それでなある時レコードと同じように弾ける俺がいた」




ジジイ「といっても原曲の早さはすごかった。チャック・ベリーは意外と早や弾きだぞ?」 



またそしてニヤっとした。仕事以外って国鉄って忙しいんじゃねえの?ガキの俺には、ぼやっとした思いしかなかった。 



ジジイ「それからちょっとして海外出張があった。行き先はイギリスだった」 



俺の脳裏に不意によぎったあるバンド… 



俺「ちょっと!それ何時の話?」 


ジジイは笑って言った。 


ジジイ「昭和36の冬から37の春。西暦は…」 


ジジイ「1961年から1962年やな」








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ここで!?


こんな佳境で!!!



中断しますwwww




続きは近いうちに



またね〜♪





 
 
 
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