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【375】

【1- 05 】  評価

さオ (2017年05月16日 20時54分)



「ホームレスにギター教えてもらった思い出」








俺「金?あーっと…」 


ここで渡すのはなんだかしゃくだった。友達との約束ごとも忘れてジジイにいった。 


俺「ビートルズ弾ける?」 


ジジイ「あんなに簡単なの弾けねえやつおらんが」 


カチンと来た。ビートルズを貶された気持ちにもなったし尚且つ俺の嫉妬が吹き出した。 


俺「へー。ブラックバード弾けたら金やるよ」 


ジジイ「…口の聞き方気を付けろい」 


それでもジジイは笑ってたが。






どうせ無理だと思った。いきなりのリクエスト。しかもブラックバードは意外と難しいというのをCD屋のマスターから聞いていた。 



(参考)

The Beatles - "Blackbird"

https://www.youtube.com/watch?v=NL6Cb85l8uM




ジジイ「ブラックバードシンギン…」 


めっちゃうめえ。ふざけんな。期待を返せ。あとものすごく発音がよかった。本家のポールより歌が上手い気がした。 


チャカチャカずっと鳴らして演奏は3分ほどで終わった。 


ジジイ「…で?」ニヤ 


このにやけにまたもカチンと来た。 


俺「じゃあ次はアクロス・ザ・ユニヴァースだ!」 


ジジイ「へいへい…」 


といってチューニングをし直した




 

【374】

【1- 06 】  評価

さオ (2017年05月16日 20時54分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」







(参考)


THE BEATLES-Across the universe (Psychedelic Version)

https://www.youtube.com/watch?v=tka6N6wM6l0






その時チューナーを使ってなかった。俺は合わせるだけでもチューナー頼りだったのにw 


俺「チューナー使わんの?」 


ジジイ「…チューナーねえ」 


弾けなかったら殺してやるとまで思った。マジで。 


ジャラン… 


完璧だった。完璧すぎてビートルズ聞いてるのすら恥ずかしいくらいの完璧。歌は上手いしギターに狂いはない。 


ジジイ「…金」 


流石にここで折れた。小銭入れから 300円出してギターケースに入れた。 


ジジイ「…お前中学生か?」


俺「なんで分かったんじゃ?」 



ジジイ「…額がショボい」 


このジジイ、コロす。ジジイは笑うのを止めなかった。 


ジジイ「お前今ビートルズきいてんのか?」 



俺「ビートルズにニルヴァーナ。後はジョンのソロとか」 


結構洋楽は聞いてると思い込んでた。でもジジイは鼻で笑って 


ジジイ「…ロックってのを知ってねえなあ…」 


ビートルズは大好きだったから腹立ったけどそれ以上にジジイに興味が湧いた。自然に怖いイメージは無かった




 

【373】

【1- 07 】  評価

さオ (2017年05月16日 20時53分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」





俺「じゃあどんなんがロックなんだよ!」 


ちょっとキレてた。まー痛い中学生だったししょうがないな。 


ジジイ「まあ、待てや。俺はもうロックは飽きたんや」 


俺「じゃあ何しよるん?」 


ジジイはニヤけて「教えられまっしぇーん」と言った。今でも覚えてるけどあのときの殺意。 


ジジイ「…これくらい集まりゃいいか」 


ジジイはギターケースをチラッと見て言った。確かに3000円以上あった。








ジジイ「お前ギターすんのか?」 


俺は痛いとこつかれたと思った。隠してもしょうがないと観念した。 


俺「したいけど出来ない」 


ジジイ「なんでや?」 


俺「弾けんけえじゃ」 


するとジジイはカッカッカッって笑ってすくっと立った。意外と背が高い。多分170以上はあった。 


ポンポンと肩を叩かれ聞かれた。 


ジジイ「弾けるようになりてえか?」 


俺「…うん」




 

【372】

【1- 08 】  評価

さオ (2017年05月16日 20時52分)



「ホームレスにギター教えてもらった思い出」







ジジイ「…ほんじゃ」 


といってメモになんかかいた。それは空き地の場所だった。 


ジジイ「明日土曜やろ?今のガキは土曜休みじゃろうからここ来いや」 


俺「は?」 


ジジイ「ギターは必ず持ってこいよ」 


俺「何時や?」 


ジジイ「…朝や」 


友達から誘われなくなったのは言うまでも無かった。




次の日朝8時に起きて少しドキドキしながら仕度した。姉貴からはどうした?って聞かれたけど友達の約束ってことにして出て来た。 


空き地には既にいた。というより…そこがジジイの家だった。間違いなくホームレスだった。

その空き地には小さな小屋があって中には四畳半くらいのスペースが裏の山手にあった。 


ジジイ「来たな?くそガキ?」 


そういって頭をがしゃがしゃされる。 


俺「やめえや!臭くなるじゃろ」 


ジジイ「…お前元気やなあ…」 


その時ジジイはジャージにシャツ1枚だった。



 

【371】

【1- 09 】  評価

さオ (2017年05月16日 20時52分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」





俺「しかし汚いな…」 


ジジイは笑っているばかりだった。そのまま裏の小屋につれていかれた。 


ジジイ「ここはスノウドニアっちゅうんや」 


俺「スノウドニア?」 


ジジイ「この小屋の名前や」 


こいつ頭おかしいと思った。ほんとにこのジジイは大丈夫なんだろうか?殺されないだろうかというドキドキが出てきた。 



----------------------------------------------------------------

(参考)


スノウドニアの小屋、、、、レッドツェッペリンの曲のタイトル


----------------------------------------------------------------




ジジイ「…おい、ギター」 


俺「へ?」 


ジジイ「ギターだよ、練習すんだろ?」




そう言われて慌ててケースからギターを取り出す。ジジイのギターは野ざらしっぽかった。 


ジジイ「へえ…ヤマハたあ良いもん持ってんじゃねえか」 


俺「元は姉貴のじゃ」 


ジジイははーん…といってまたにやけた。そこでやっと気付いた。 


俺「ジジイのギター変なやつやな?」 


ジジイ「お前ほんと生意気じゃな?」




 

【370】

【1- 10 】  評価

さオ (2017年05月16日 21時47分)



「ホームレスにギター教えてもらった思い出」







ジジイはそういってギターを取った。後に知ることになるがそれはドブロというアコギ(というよりリゾネーターギター)だった。 


知りたい人は調べてほしい。俺はそのギターに興味津々だった。 



ジジイ「これか?こいつは"よしの"じゃ」 


俺「は?」 


ジジイ「ギターの名前や」 


なんでも名前つけるのか…ほんとに頭おかしいと思った。これまた後に分かるがジジイはなんでも名前をつけるクセがあったw





ジジイはドカッと座って俺を見た。 


ジジイ「何が弾きたい?」 


俺は色々迷ったが好きな曲を素直に言った。 


俺「ヒア・カムズ・ザ・サン。これしたい」 


俺はジョージハリスンファンだったのだ。ジョージのシャツなんて1枚も持ってなかったがw 


ジジイ「…分かった」 


この時少し目付きが変わった気がしたんだ。俺はジジイに続いて汚い座布団の上に座ってギターを担いだ。







(参考)

The Beatles (George Harrison) - Here Comes The Sun

https://www.youtube.com/watch?v=zDvAS_Af-uM




 
 
【369】

【1- 11 】  評価

さオ (2017年05月16日 20時51分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」





ジジイ「まあまずは焦るなや。キーから教えんぞ」 


いきなり教則本を完全に無視だった。全くキーなんて言葉知らなかった。 


ジジイ「…あー。キーってのはな?コードのベースや。簡単に言うとな」 


それから基本音というのを教えてもらった。ジジイはやっぱり面白い人間だったが教え方も凄い上手かった。 


焦らんでええ、手が小さいのはしゃあおまへんとか慰めの言葉をかけてくれてた。 


まだまだ中学生。手が小さい上に飽き性だ。キー押さえるだけでつまらなくなっていった。そこでジジイの話題をふった。




----------------------------------------------------------------------



>わたいの音楽のスタートはThe EaglesのHotel Californiaだったなあ。

>弾けずじまいだったけどw



(参考)


Eagles -- Hotel California Lyrics song


https://www.youtube.com/watch?v=K6S4O-VtZBI



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俺「なあ?ジジイってなんでホームレスなん?」 


ジジイ「…うっさいわ。ホームレスでもええやろ」 


俺「何歳?」 


ジジイは少し考えて「68」とだけ言った。正直ジジイジジイと言ってたが見た目はもっと若かった。

このジジイが60代なのも信じられなかった。
 
 

朝9時から約三時間。延々キーを単音で押さえるだけをしていた。正直つまらくなっていた。 


俺「なー、こんなんで上手くなるん?」 


ジジイはクスッと笑って俺の肩を叩いた 


ジジイ「お前、名前と歳は?」




俺はいきなりでなんでこんなことを聞くのか分からなかった。 


俺「俺は俺。14じゃ」 


ジジイ「俺はジジイ、68」 


益々分からなかったけれどちょっと面白かったw 


ジジイ「…54も違えばギターの歴も違うっちゅうことや」 


そういってすくっと立っていきなり着替えだした。 


俺「なんで着替えるん?」 


ジジイ「…金」 


また一言呟いただけだった。




 

【368】

【1- 12 】  評価

さオ (2017年05月16日 21時49分)


「ホームレスにギター教えてもらった思い出」






俺もすぐ見たいと思った。ほんとはどんな音楽をするのか気になったからだ。 


俺「着いていってええか?」 


ジジイ「…変な目で見られるからやめえや」 


俺「遠くで見とくわ」 


ジジイ「…そうか」 


そういって俺は自転車。ジジイは歩いていつもの駅まで向かった。俺のギターケースはハードソフトだったがジジイはハードだった。 


俺「ケース重くないん?」 


ジジイ「…まだ若いけえの」




スーツ姿に違和感しかなかったがスーツ姿でジジイは駅の前に陣取った。 


ジジイ「…今日は焼き鳥だな」 


俺「は?」 


ジジイは無視してギターを取り出してチューニングした。そして筒状の変なガラスを出して歌い出した。 


その声はとても力強くて、カッコよくて、渋かった。ジジイらしかった。

ピックも使わずギターをバンバン叩きながら歌うのに俺は鳥肌がたちだした。 


俺「ジジイ!」 


話しかけても歌を途中で止めることはなかった。何度しても曲の途中で止めなかった。




ジャラン… 


ジジイ「なんや?うっさいのお…」 


この曲の全てが知りたかった。訳の分からないことを歌っているはずなのにカッコいいだなんて今まで聞いたこと無かったからだ。 


俺「なんや?今の曲?なんてタイトル?」 


ジジイ「これか…これはなあデスレターっちゅうんや」 


俺「デスレター?」 


聞いたことも無かったし見たこともなかった。 


俺「作者は?」 


ジジイは既にまたチューニングしていた。それから少し音を替えてまたひきだした。今度は知ってる曲だった。








俺「…スタンド・バイ・ミー?」 


ジジイは結構大きな、でも優しい声でスタンド・バイ・ミーを歌い上げた。 




(参考)


Stand By Me Ben E. King


https://www.youtube.com/watch?v=pHa4pvspCqc





すると会社員一人が金を落としていった。(確か会社員。記憶曖昧w) 



ジジイ「…っし、仕事や」 


ジジイはそれからずっと歌ってた。俺は途中で飯を食べにスーパーに買い物行ったりしてたがジジイはびくとも動かなかった。 


ちょこちょこお金が増えていく。曲は知らないものから知ってたものまで色々あったが全てが洋楽だった。



 
 
【367】

【1- 13 】  評価

さオ (2017年05月16日 20時50分)



「ホームレスにギター教えてもらった思い出」






夕方になってもジジイは歌った。俺はそろそろ帰らないとまずいかなと思い出したときだった。 


ジジイ「お前そろそろ帰れや」 


まずい!顔にでたか?と内心焦った。でもそんな焦りとは真逆だった。 


ジジイ「お前にやる焼き鳥はねえんじゃ」 


そんなことかい。焦って損したわ。 


俺「へー。帰りまーす」 



すると後ろからジジイがボソッと呟いた。 


ジジイ「…また明日来いや」






その次の日にも行った。またいた。 


ジジイ「よおーきよったのお」 


また前日と同じような日になった。三時間キーを単音で押さえるだけ。その日はちょっとリズムがついたが。 


それから駅に行ってまたご飯の品目を言って歌い出す。最初に夜何を食べるのかを決めて歌うのだという。

1日2食しか食べないと知ってなんで死なないんだこのジジイと思った。 



それからこんな変なジジイとのギター練習が始まった。 


学校がある日はダッシュで駅を出てチラッとジジイを見てうなずく。

ジジイはニャっと笑ってまたギターを弾く。これが今日は行くの合図だ。 



といってもほぼ毎日行っていたんだがwww


 

【366】

【1- 14 】  評価

さオ (2017年05月16日 21時50分)


「ホームレスにギター教えてもらった思い出」





ジジイが夕方少し早めに弾き語りを止めて小屋に帰った。それからは親や姉貴を心配させないために1時間半しかジジイに会えなかった。 


ジジイはなんら嫌そうな顔せずにギターを教えてくれた。俺も一時間半しかないから真面目に練習した。 


ジジイがしっかり褒めてくれてたからだ。間違っても 


「あーそうじゃあねえな。こうだ」ってな感じで全然厳しくなかった。それでもサボらず練習した。 


一軒家だったから音を小さめに家でも練習した。姉貴からは案外感心された。なぜかは知らない。





俺は覚えが悪くて何回もイライラした。それでもジジイは笑うばっかりだった。 


ジジイは駅でかなり上手いギターを弾く。俺はそれをしっかり見ていたんだがな… 


運指が速すぎて見えないんだなw初心者にあれは無理だわw 




それから1ヶ月が過ぎた。やっとこさキーをマスターした。どこがどの音ってのを完全に覚えた。 


俺「よっしゃあ!」 


ホントに声が出た。ジジイからテストを受けてそれに全てオーケーをもらったのだ





ジジイ「はっはあ!覚えたなあ!」 


そうやって肩をバンバン叩かれた。少し痛かったけど嬉しくてそれどこじゃなかった。 


ジジイ「それじゃあ次は曲に行くかあ」 


俺「ホントかよ!?」 


嬉しくて大声を出した。 


ジジイ「バカッうるせえ。たまたま近くに家がねえからって人がいるかもだろ」 


俺「す、すまね…」 


ジジイ「…スモーク・オン・ザ・ウォーターや」 


俺「は?」

 
 
 
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