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【405】

【 2- 2 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時54分)



「ホームレスにギター教えてもらった思い出」





ジジイ「パワーコードはな親指でEを押さえるとしやすいで?」 


俺はこれで練習したせいでFは握りこんで弾くようになってしまったんだがw
 
でも確かに弾きやすかった。というより刷り込みだったんだろう。 


真面目に練習すればソロ以外は1ヶ月程度だった。 


でもある時だった。予想外に多くの金を手に入れたジジイはニコニコしながらある買い物をした。





俺「何を買ったんじゃ?」 


ジジイ「2ヶ月に1回の楽しみじゃ」 


そういって買ったのはタバコだった。今でも覚えてるというか俺が今でも吸うきっかけになった。アメスピだった。 


俺「ジジイはマイセンやろw」 


ジジイは凄く幸せそうな顔をしてタバコを吸った。 


小屋に戻った時にジジイがトイレで席を外した。その時ふっとジジイのギターが気になった。


 
 
【404】

【 2- 3 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時53分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」




ものすごい良い音がするしカッコよかったからちょっとした好奇心でそれを弾いた。 


俺「意外と弾きにくいなあ…」 


そしたらジジイはいきなり戸を開け今まで聞いたことの無い大きな声で 


ジジイ「そのギターに触るんじゃない!!」と怒鳴った。俺はマジで焦ってこそこそと返した。 


俺「ご、ごめん…」 


ジジイ「…また明日来いや。今日はもうしけたわ」 


この時が最初で最後のジジイのぶちギレだった。ホントに怖かった。

見た目からは想像もつかないドスの聞いた声だった。






その日は半泣きで帰って家でちょこっと練習して寝た。 


でも次の日行ってみるとまたジジイはけろっと笑って演奏を止めた。俺はホントに昨日のジジイか?と内心疑問だった。 


スモーク・オン・ザ・ウォーターがソロ以外は完璧に弾けるようになったときに1つの思いがけない事がおこった。 


中三の五月。その日は1日休みでまたジジイに教わって駅に向かったときの事だった。


 
 
【403】

【 2- 4 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時52分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」



ジジイが弾くいつもの場所に既に先客がいた。弾き語りの先客だった。 


ジジイ「はー…珍しいこともあるんじゃなあ」 


そこにいたのは黒髪が長く凄く美人、というより超俺好みの女性だった。正直一目惚れだった。 


しかし変な点が1つあった。

その美貌からか、かなりのお金が落としてあったが。小銭が投げられたときは深々と頭を下げるのに

お札が入れられたときには普通に弾くのだった。




そんな変な違和感をうっすら感じているとジジイがスタスタ近付いていった。内心全く準備が出来てなくて慌てて追った。 


ジジイ「嬢ちゃん、ギター上手いな」 


とジジイはいきなり女性の横にドカッと座る。因みにその女性は折り畳み椅子に座ってた。 


女性は横を向いてちょっとニコッとして 

「もしかしていつもここで弾いてる人ですか?」と聞いた。 


ジジイは腕を組んで絶世のドヤ顔で「いかにも!」と言った。ホントに吹き出しそうだった。




 
 
【402】

【 2- 5 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時52分)





「ホームレスにギター教えてもらった思い出」




すると女性が演奏を止めてジジイの方を向き満面の笑みで言った。 


女性「私あなたに憧れてここで弾くことにしたんです!」 


憧れ、、、??? ちょっと待てよw ジジイに!?

俺はジジイがギターと歌が上手かったから興味を持ったんであって、、、憧れとかはそんなに無かった。

うっそだろwとか思ってたらジジイもウソでしょ?みたいな顔してた。 


この光景うまく描写したいんだけどねw ホントにシュールだったからwww
 





女性は、さらに続けた。



女性「いつもサンハウスとかジョン・リー・フッカーとかしてますよね!私好きなんです!」 


俺にはジジイがやってた曲の作者なんて知らなかったがこの女性の趣味が相当渋いのが手に取るように分かった。 


女性「私もやろうとするけど出来なくて…」 


ジジイは驚いた顔を一瞬だけしてまた笑って女性の肩を叩いた。 


ジジイ「なんも心配することないさ。嬢ちゃんだって弾けるぞ?」 


女性は唐突にジジイに私の演奏を聞いてくれと言った。ジジイは何かはっとした顔をしてまた笑っていいぞと言った。



 
 
【401】

【 2- 6 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時51分)





「ホームレスにギター教えてもらった思い出」



女性はアコギをチューニングしてセットした。よく見れば彼女は左利きだった。

そういえばこの頃俺は既にチューナー無しでチューニング出来るようになっていた。というかさせられていた。 


女性「じゃあ」とだけ言って演奏に入った。ものすごく上手い。ジジイとは違うけれど上手い。どこか優しげな音色が連弾で爪弾かれる。 


ジジイはニヤっとしてタバコを手に取りまた黙って演奏を聞いた。 


一方の俺は「え?歌は?」みたいな感じでヤムチャ目線で曲を聞いてた。




ほんの2分程度で演奏は終わった。俺には感動しかなかった。ジジイは大きく煙を吐き出すとにやついて 


ジジイ「リトル・マーサか。嬢ちゃん渋いね」と笑った。その演奏にまた誰かが小銭を投げる。女性はすっとうなずいた。 


ジジイはふっと悲しい顔をして溜め息をついた。 


ジジイ「嬢ちゃん今まで大変だったろう?いくつよ」




(参考)


Duane Allman "Little Martha"

https://www.youtube.com/watch?v=kmSPCOby-1A







俺はこの曲が弾けるようになるまで苦労したことかと思った。女性は笑って呟いた。 


女性「ばれちゃいましたか…」 


俺はすっとジジイの横にいって「何がばれたって?」と聞いた。ジジイは真剣な顔で俺の耳元で言った。 



ジジイ「この嬢ちゃん"めくら"だよ」





 
 
【400】

【 2- 7 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時50分)





「ホームレスにギター教えてもらった思い出」





めくら。この言葉の意味は中学生でも分かった。盲目の人だった。女性は目を開いてるのに見えないってのでちょっと絶望した。 


でも瞬時に尊敬の念が出てきた。なんで目が見えないのに弾けるんだ?まさか音だけ!?ってな感じで。 


女性「私は○○さくら。 平仮名で、さくらです」 


いきなりの自己紹介にもジジイは動じなかった。 


ジジイ「ジジイや。68やで」




女性が年を言わざるを言えない状況にするあたりホントにデリカシーないと思った。


女性は気にせずニコッとして「17です」と語った。 


俺「姉貴と同い年やん…」 


思わず言葉が出てしまった。女性はきょとんとして「そちらに誰か?」と聞いた。慌てて返事を返す。 


俺「俺っていいます。中学生です」 


女性「そう。俺君。お孫さん?」 


いやー…といってジジイとクスッと笑った。 


俺「俺はジジイにギターを教わってる立場です」




 
 
【399】

【 2- 8 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時50分)



「ホームレスにギター教えてもらった思い出」






すると女性は驚いた顔をして俺の手を取ろうとした。 


女性「ズルいです!私も教えてほしいです!」 


ジジイはカッカッカッと笑って女性の肩を叩いた。 


ジジイ「よっしゃ!嬢ちゃん何が弾きたい?教えてやるぞ?」 


女性は大きな声で「プリーチング・ザ・ブルース」と言った。 




俺は盲目の彼女に恋をした。





(参考)


Farhan AF4- Still Got The Blues

https://www.youtube.com/watch?v=W-wYVHsy8og



注: 違うかも?? ↑






その日は俺だけ彼女の連絡先を手に入れ、みんな解散した。


彼女は事情が事情だし週末の2日だけジジイに会いに来ることになった。 



週末に予定を入れる気はさらさら起きなかった。 親父が飯食べに行こうといっても断った。


彼女に会えたらそれでよかった。でも1回、もつ鍋に連れていくと言われた時はむちゃくちゃ考えた。 



ジジイは俺に課題を出すようになった。


コードを覚えろということだった。正直キーが分かっていて教則本を見ればすぐだった。 



彼女にはボトルネックの扱いを1から教えてた。

彼女は覚えがいいのかものすごく上手だった。それに歌も優しくキレイだった。



 
 
【398】

【 2- 9 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時49分)





「ホームレスにギター教えてもらった思い出」






彼女は良く「リトル・ウィング」を弾いた。


良く考えれば17にして弾ける人間は今からしたらそうはいない。上手いのも当然だった。 


それに耳が良かった。俺のギターが少しでもチューニングが狂えば教えてくれた。3人ともチューナーなんて使わなかったw 


いつものサイクルに彼女が加わった。俺は色んな意味でハッピーだった。

何回も彼女で抜いた。失礼なことに盲目というのも興奮してた。中学生なんで許してくれやw



(参考)



The Corrs- Little Wing

https://www.youtube.com/watch?v=HVCHOR-rVlQ




注: 違うかも?? ↑






俺は彼女とよく話した。彼女もよく話してくれた。音楽に関してはジジイと彼女で語り合って蚊帳の外だった。 


だから恥を承知で彼女に聞きまくった。どんな音楽が好き?カッコいいのを教えて下さい。 


彼女は聞いた翌日にCDを持ってきた。 


さくら「はい、これ。これスッゴいカッコいいんだ!今のバンドではこれが好きかな!」 


そのCDはホワイト・ストライプスだった。その日から夢中でコピーした。パワーコードに単音リフ。意外と簡単に感じた。





中でもブラック・マースという曲は死ぬほど弾いた。ジジイも彼女も凄いと褒めてくれた。 





(参考)



The White Stripes Black math

https://www.youtube.com/watch?v=-VfnSZt-5pw




俺は自信がついて色んな曲をコピーした。正直言ってビートルズなんか忘れてたw

ディープ・パープルは難しすぎたけど、ホワイト・ストライプスとかニルヴァーナだったら簡単に出来た。 


ギターを始めて半年と少し。俺のレパートリーは20曲を超えた。 


彼女は色々な音楽を教えてくれた。ロックからブルース。ジャズにクラシックまで。しかも即日CDを持ってきてくれた。






 
 
【397】

【 2- 10 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時48分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」





俺「気になったんですけど」 


この口調はいつもジジイに笑われる。ジジイにはため口の癖に女性には敬語ってところが面白かったんだろう。 


さくら「なあに?」 


俺「なんでそんなにすぐに大量のCDを持ってこれるんですか?」 


さくら「えーとねえ…」悩む姿すら可愛くてしょうがなかった。 


さくら「そうだ!1回うちに来なよ!」 


唐突に。その時ジジイはいなかった。勝手にお家にお呼ばれしてしまったのだ





嬉しくて堪らなかった。その日は親父に勉強しろと言われていたけれどそんなの知ったこっちゃ無かった。 


いつもの駅で待ち合わせて俺はジジイがつけてないかどうかを調べて出会った。やっぱり駅の階段は危なっかしかった。 


通行人は彼女の杖を避けない。気にしない。後に聞いた話だが何回も転ばされたという。 


さくら「おまたせ!」 


俺「う、うす…」 


さくら「じゃあ私の目になって!」 


そういって腕を捕まれた。正直泣きそうだった。彼女の身の上に勝手に同情してた。


 
 
【396】

【 2- 11 】  評価

さオ (2017年05月30日 19時48分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」





それからその駅に戻って2駅ぐらい進んで降りた。正直自転車でも行けた。 


彼女とひたすらに点字ブロックの上を歩いて不意に彼女が止まった。 


さくら「今右にお店あるよね?」 


俺「え、ええ。ありますよ」 


さくら「そこ!」 


そこは小さな古楽器店だった。そこが彼女の家だった。(正確には住む家はもっと駅の手前にあった) 


カラン 


いらっしゃいと出てきたのは女性だった。彼女の母親兼店長だった。





彼女母「あら?その方は?」 


説明しようとすると遮られた。 


さくら「私の目!」 


俺は恥ずかしくってちょっと、と。止めにかかってた。


母親はあらあらとにんまりしてたのを覚えている。 


店内はやっぱり広くは無かった。楽器だけでなくCDも置いていた。しかも凄い数が仕舞われていた。 


俺「すっげー…」 


彼女母はふふんと鼻をならした。彼女母は若いときはかなりの美人だったんだろうなあという顔。


この母あってこの娘。という感じだった。




 
 
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