| トップページ | P-WORLDとは | ご利用案内 | 会社案内 |
■ 475件の投稿があります。
<  48  47  46  【45】  44  43  42  41  40  39  38  37  36  35  34  33  32  31  30  29  28  27  26  25  24  23  22  21  20  19  18  17  16  15  14  13  12  11  10  9  8  7  6  5  4  3  2  1  >
【445】

【 4 - 02 】  評価

さオ (2017年06月23日 20時20分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」





ジジイは黙って聞いてくれた。演奏が終わると静かに拍手をしてくれた。俺もさくらも驚いた。でも嬉しかった。 


ジジイ「…俺よ。もうちょっと上手くはなれんのかw」 


俺「おいおい、今の流れでいう言葉じゃねーぞ」 


そういって3人で笑った。季節は秋に入っていて外は少し寒かったが俺らは暖かかった気がする。 


ある時バンドで地元のホントに小さいライブハウスでライブをした。俺らにはベースがいなくて姉貴が請け負ってくれた。




ジジイはさくらに金を借りたらしく一番前で酒をのみ、タバコを吸いながら俺らを囃し立てた。 


この時三バンドの対バンで、手違いでトリになったのもいい思い出だ。前の二バンドはとても上手くてメチャクチャ緊張してた。 


ステージに上がると最初に声をあげたのはジジイではなくさくらだった。 


さくら「俺君頑張ってよ!」 


こうなると後には引けないし、ミスも出来ない。ジジイも囃し立てる。 


ジジイ「ミスったらそのテレキャスへし折るぞ〜!」






観客は笑う。俺はますます緊張した。俺の緊張を解そうとしたみたいだが逆だった。 


他の二人(プラス姉貴)はその言葉で緊張がほぐれたらしく笑みがこぼれていた。 


最初の曲はジェフ・ベック・グループのシチュエーション。必死に練習したんだ。この曲はそつなくこなした。 


問題は二曲目だった。前のバンドと曲が被ったのだ。曲はクロスロード。もちろんクリームの方である。



(参考)


Cream Crossroads

https://www.youtube.com/watch?v=PE9HvSdcaL4



 

【444】

【 4 - 03 】  評価

さオ (2017年06月23日 20時20分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」






俺「ホントにやるか?」 


全員はおうとうなずく。しょうがない。諦めた。 


みんな最高だった。ジジイはいいぞいいぞーとずっと騒いでいた。周りもノリノリだった。

二次会は俺の家で行われた。もちろんジジイもさくらも同じだ。 


キーボードのやつはジジイに気に入られてた。ずっとジジイと腕相撲してた。

俺はドラムの奴にさくらのことでいじられてた。親父は夜遅くまで遊ぶ俺らに何も言わなかった。




高一の終わり。ジジイがあることを言い出した。 


ジジイ「俺はな、短歌が好きなんじゃ」 


俺「短歌?」 


ジジイ「あんなに完成されたものはない。俺はずっとブルースをしてるが短歌もしてみたいんだよ」 


初めて聞く。短歌だって?俺からしたら意味の分からん文章でしかなかった。 


ジジイ「好きな短歌があるんじゃいつしか聞かせてやる!」 


今聞かせろよ!そう思った。でも聞かなくて良かったと今は思う。




その話を聞いた次の日いつもの如くジジイにギターを習おうと今度はジジイを家に呼んだ。 


すると少しジジイは親父に話していた。親父はそうですか、そうですか。と俯き喋っていた。 


その日初めてスライドバーを使ってブルースをした。確か曲は子牛のブルースだったはず。 


ジジイはまたうめえぞと言って俺の肩を叩く。俺はやかましい、と返す。まあ普通のやりとりだった。


 

【443】

【 4 - 04 】  評価

さオ (2017年06月23日 20時19分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」



そして練習が終わってジジイが変な事を言い出した。 


ジジイ「あー…お前のギター貸せや」 


俺「は?」 


ジジイ「お前のギターいい音するから帰って弾いてみたいんじゃ。ええやろ?」 


それくらいならとギターをケースに入れて渡した。ジジイは俺のギターを肩に、ジジイのギターは手に持って帰っていった。

それが最後のジジイの姿だった。







朝起きて学校に行く準備をして外に出る。すると玄関にギターが立て掛けてあった。 


俺「手渡しにこいよ…あのジジイ」 


一旦ギターを部屋に置いてそれから学校に向かった。

そして家に帰ってギターをケースから取り出した。今日はさくらが家に来る、なんて想いながら。 


ギターの裏板に何か書いてあった。それは旅行に太宰府天満宮に行った時によく見た短歌だった。 



  東風吹かば 

   匂いおこせよ 

    梅の花 

     主なしとて 

      春を忘るな 
  
              ジジイ



 

【442】

【 4 - 05 】  評価

さオ (2017年06月23日 20時18分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」




意味がわからず親父を呼ぶ。 


俺「親父ぃ!見てくれ、どゆいみ?」 


親父はその短歌を見てすぐに泣き崩れた。俺はおろおろするばかり。 



ピンポンとチャイムが鳴り、さくらと妹が来た。 


俺「あー…一応上がって?」 


親父はまだ部屋で泣いていた。妹はどうしたの?と不安そうに俺に聞く。 


俺「俺にもわからん」




妹がその短歌が書かれた俺のギターを手に取る。 


妹「俺って…古文出来ないの?」 


俺「国語は現代文だけやな。あとは世界史は得意…」 


妹「ふーん…」 


さくらもおろおろしていた。何がおこってるのかよく分かってないのだろう。 


親父がぼそりと呟いた。 


「大事にしろ」


 

【441】

【 4 - 06 】  評価

さオ (2017年06月23日 20時17分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」



それから次の日に先生に聞いた。そこで全てを察した。学校なのに大泣きした。部活もサボった。

ジジイを探し回った。いつものジジイの家、公園、駅前、先頭、屋体、タバコ屋。どこにもジジイはいなかった。 


家に泣きながら帰ると親父が玄関に立っていた。 


親父「お前、部活をサボったそうだな…」 


そんなことどうでもいい。ジジイのことしか頭に無かった。 


親父「…話がある」





そういって親父は親父の部屋に俺を招き入れた。親父はジジイからの最後の伝言を聞いていた。 


ジジイは俺が立派なギタリストになっていること、長居はするつもりはないこと、さくらによろしくということを言い残したそうだ。 


俺には何も心に来なかった。というより大切な親友が死んだみたいに絶望?した。

何故それを直接言わなかったのか、何故突然また旅に出たのか。 


疑問しか浮かばなかった。



 

【440】

【 4 - 07 】  評価

さオ (2017年06月23日 20時15分)




「ホームレスにギター教えてもらった思い出」




俺は黙って親父の話を聞くだけだった。涙は流れ続けた。 


親父「…なあ、俺にもギターを弾いてくれよ」 


親父は突然言い出した。 


俺「え?」 


親父「先生、すげえだろ?昔はもっと怖かったんだがな」 


親父「まあいい、とにかくやってくれよ」 


親父は俺のギターを勝手に持ってきて俺につきだした。 


親父「何でもいいさ。ほらブルースとかしてくれよ」





ブルースなんか歌えない。でも歌えというなら俺は歌う。簡単なブルースだ。

ジジイにも全く届かない腕前だけど、全く届かない声色だけど、俺は歌うと決めた。 


俺「…あ、じゃあ…ヘイ・ジョーってやつ」 


親父「ジミヘンか、いい趣味じゃん」 


ジャラーン 


二人して泣く。親父はいつの間にか母さんの写真を持ってた。俺はヘイ・ジョーを歌った。

さくらが最初に教えてくれたジミヘンの曲だった。 





(参考)


Jimi Hendrix Experience - Hey Joe Live

https://www.youtube.com/watch?v=W3JsuWz4xWc






【439】

【 4 - 08 】  評価

さオ (2017年06月23日 20時15分)


「ホームレスにギター教えてもらった思い出」




それからさくらにも説明した。ジジイは旅に出たことを。さくらはそうとだけ呟いて顔を背けた。


俺は黙ってさくらを抱き締めた。さくらが泣いた気がした。気のせいなんだろうけど。 


そして短歌も聞かせた。さくらはジジイさんはカッコつけすぎと僅かに笑った。 


それからバンドで色んな曲をした。いつしか俺はバンマスになっていてブルースロックをよくした。 


ブルースをやっているときだけジジイと繋がってる気がするからだ。 


今になってもジジイを探そうという気はあまり起きない。いつの日かひょこっと戻ってきそうだから。


今ジジイは80かな?あのジジイは100まで死にそうにないからなw 


ジジイと別れて約10年、ジジイの記憶だけは忘れたためしがない。それだけ俺とジジイの関係は密だったんだ。



 

【438】

【 4 - 09 】  評価

さオ (2017年06月23日 20時15分)



「ホームレスにギター教えてもらった思い出」




その後のこと・・・




高校の終わり頃に親父が病気になった。なんか重い病気らしくすぐ入院した。 


姉貴は大学言ってたけど、見た感じ行けそうもないなと思ったから俺は叔父に頼んで高卒で就職した。 


それからバンドにさくらと姉貴、さらにベースの奴の彼女を正式にバンドに入れて スウィート・ピーチってバンドに名前を変えた。 


俺が20になった夏親父が死んだ。親父は最後に俺に泣くなと言ったから泣かなかった。俺らは叔父の家に引き取られた。






さくらも悲しんでくれた。俺はそれからよくさくらと会うようになっていった。バンドメンバーは全員さくらを支えてくれた。 


さくらの家に止まることも多くなった。因みに高三の時にさくらの妹と同じクラスになって仲良くなった。 


そして俺が24になって、さくらが27。さくらはジミの歳になっちゃったなんて言ってたっけ。俺が告白した。 


俺「一生貴女のステッキにさせてください!」 


そして俺らは結婚した。さくらはただただ俺に抱きつくだけだった。




 

【437】

【 4 - 10 】  評価

さオ (2017年06月23日 20時16分)



「ホームレスにギター教えてもらった思い出」




今じゃさくらはキャンディスナイト。俺はリッチーブラックモアになってる。


さくらへは婚約指輪は渡さなかった。俺が渡したのはお互いの名前が深くほってあるサムピック。 


キザだなー俺www今からしても恥ずかしいわ。


現在さくらは産休だけど実家のCD屋を義母さんと営んでる。


目が見えないというのはあんまり重要じゃないらしい。彼女いわく。





さくらは来週30。今年くらいはさくらにギターの音色をプレゼントしようと思ってる。 




補足


短歌の意味・・・




短歌の意味は東風が吹いたなら主人がいなくても春を察知して花よ咲け。という意味の歌です。 

菅原道真が太宰府に左遷されたときに自分の好きだった梅の花によんだとされる歌です。



俺はもう生きてこの地を踏む事もない 
だがお前は梅の木の様に花を付け 
東風に乗せその香りを俺に届けてくれ 


俺は生きてお前には会えないだろう 
だがお前は今まで通りの生活をし 
俺にギターの音色を届けてくれ 

こんな感じか?

じゃね? 

別れの句と思う




多分、だけど 

じじいが梅の花の短歌が好きだったってのもあるかもしれんが 

その歌にじじいが託した意味は「俺がいなくてもギターを弾き続けろよ」だと思う

小粋なじじいだな










FIN




----------------------------------------------------------------------------------------





以下、わたい汗


終わるまで随分と時間がかかってしまいました。


俺くんの奥さんとなったさくらさん。


これは、わたくしが勝手に名前を変更させてもらいました。


広島弁ということで、、、ドラマ「ラヴソング」の藤原さくらちゃんを思い出して、ヒロインの名前にさせてもらいました。




というわけで


最後に、さくらちゃんの路上ライブSONNGを\(^o^)/





藤原さくら「やさしさに包まれたなら 」サンシャン広場路上

https://www.youtube.com/watch?v=cSUwAJY91_w







みんな、元気でね〜



 
 

【436】

RE:Hello Again2〜 ...  評価

きょんきょん (2017年06月21日 08時38分)



ありがとうね

続き楽しみ^^
<  48  47  46  【45】  44  43  42  41  40  39  38  37  36  35  34  33  32  31  30  29  28  27  26  25  24  23  22  21  20  19  18  17  16  15  14  13  12  11  10  9  8  7  6  5  4  3  2  1  >
メンバー登録 | プロフィール編集 | 利用規約 | 違反投稿を見付けたら