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【2415】 | RE:誰もいない海 〜セカンドシーズン〜 rarara (2010年03月05日 06時02分) |
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第二十章 その2 砂塵のような、ほこりのような、見たことのない空気が目の前で宙に舞う。 ガタガタ道に過剰反応する車の動きに辟易としながらも、 なぜかその空気は、俺の目を釘付けにする。 その空気の取り囲むものは、 不揃いのひしめき合った独特な建物であったり、 何人もの人が乗った車やバイクの群れであったり、 行き交う人の群れであったり。日本とは違う新鮮が、そこにあった。 車で走ること2時間、辺りは夕暮れ色に染まる。 車窓の風景は、いつの間にか市場のような場所へと変わる。 隣で運転していた男は、テツ、と俺を呼んだ。 「お前、泊まるところない、今日は俺の家、いいか?」 俺は「OK」と答える。 男は優しげに笑い、車を自分の家の前に止めた。 名前はレタと言う。 最初は怖いヤツかと思ったが、 車の中で他愛のない話をしているうち、そうでもないことに気づく。 その雰囲気は、なんだか宇良に似ていた。 男の家の前で「おかえりなさい」と子供達が抱きついてくる。 言葉はわからないが、多分そう言いながら抱きついている。 俺にも「はじめまして」みたいなことを言ってくれた。 奥さんが奥から出てきて「はじめまして、妻のティナよ」と日本語で言ってくれた。 俺も「テツと呼んでください」と一言。 荷物を置いた後、俺はいよいよ浩一のいる場所へと向かった。 高鳴る胸、疲れも忘れて俺は向かった。 浩一、浩一。 肉親のように思っていた浩一。 今、どうしているんだ? 頭の中はそのことでいっぱいだった。 「テツ、お前、きっとつらい、それでも、会うか?」 レタは俺に言った。 「覚悟は決めてる、ただ、あいつに会いたい」 しばしの沈黙のあと、レタはコクンと頷いた。 市場から少し離れた、薄暗く妖しげな光で満たされた場所に到着する。 日本でいえば風俗街とか大人の街とか言われる場所だ、とレタが説明した。 「ここにいる」レタは指さす。「これを、つける」と、俺にサングラスを渡した。 地下に続く階段がそこにあった。 カツン、カツンと響く石の階段。 入り口付近に来ると、レタはお金を渡しながら、そこに立つ警護の男に話をする。 男は俺の顔をちらっと見て、OKの合図をする。 ドアが開き、俺はレタと一緒に浩一のいる場所へ向かった。 「コーイチ、コーイチ、お客様」 レタが話しかける。 話しかけた先に、浩一がいた。 無言で振り返る浩一。 本当に浩一だった。 浩一も、俺の顔を見て驚愕している。 「て、テツさん…?」 俺は浩一に抱きついた。涙も止まらなかった。 嗚咽しながら泣くのは初めてだった。 「馬鹿だなぁ、何で来たんだよ…」 浩一は泣きながら言う。 「テツさん、俺さ、そろそろ仕事なんだ…また、後でな」 すがりつく俺の肩をポンポンと叩き、浩一は俺を引き離す。 泣きながら、俺は浩一をまじまじと見つめる。 浩一は少し痩せていた。 健康そうな体は青白くなり、そして…膝から下は、その足がなくなっていた。 |
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【2416】 |
目押し初級? (2010年03月08日 18時11分) |
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これは 【2415】 に対する返信です。 | |||
わぁ、長文だけど読んじゃったジャマイカ!!! 一寸、見沼荷、長文専門店になっていたのか。おじゃま島下。 |
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この投稿に対する 返信を見る (1件) |
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