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【799】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 101  評価

さオ (2016年03月29日 13時18分)




「いいやる気だな!」と思って俺も再びフェイントのような球を同じコースに出した。 

素早く動いて、綺麗にボールが上がった。 

手前にいた子が「オッケイ!」と言ってトスを上げる。 


そのまま、後方にいた子に向かってレフトからのウイングスパイクを想定した球を打つ。 

バシン、と無回転で綺麗に上がって、再び流れるように俺の方にトスが返ってくる。 

コーチ役だというのに、俺は楽しくなって無我夢中になった。 


「ああ、これはバレーだ」 

「仲間に囲まれて、声を上げて、無心にボールを追いかける、これだ…」 

とそんな気持ちが込み上げていた。 




休憩時間になると、すっかり俺も汗だくになっていて、 

腰に巻いたコルセットが蒸れるのが気になった。 

腰に少々違和感はあったものの、結構動いた割にこんなものか、とも思えた。 


簡単な休憩が明けると、奈央が勢いよく「サーブカットいくよー!」と声を上げた。 

「はーーい!」と掛け声が溢れて、皆コートの中へ並ぶ。 

俺はその様子をコート外から眺めていた。 



「いきまーす!」「こい!」「ナイスカットー!」と声が止むことはなく、 

女子とは言え賑やかでやる気のある部だなぁと思った。 

全体的な力は強豪に比べればそこまでではないと思ったが、 

チームとしての雰囲気はとても良かった。 

この中でキャプテンをやっているのだから、やはり奈央は頑張っているのだな、と思った。 



【798】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 100  評価

さオ (2016年03月29日 13時17分)



 
奈央が「3メンするよ!」と叫ぶと、 

「はい!」と掛け声が上がって、コートの中に3人が入った。 

俺はコートの中央に誘導され、ボールを出すように言われた。 


見知らぬ女子が3人、俺の方を見て真剣に構えていた。 

割と力を込めてボールを打ったが、綺麗にレシーブが上がってトスが返ってくる。 

「やるな」と思って、今度は後ろのコースへ打つ。 

綺麗に上がって、またトスが返ってくる。 




俺はテンションが上がって「いいねぇ!」と叫んだ。 

3人は「来い!」と声を張り上げた。 


少し意地悪をして、今度はレフト方向からインナーへきつい球を打った。 

反応はしたものの、手元がおざなりになって、ボールはコート外へと飛んでいった。 

俺は「なるほど」と思って、瞬時にアドバイスをした。 



俺「基本はできてるから、自分のとこに飛んできたボールは綺麗に上がるけど」 

俺「きついコースや、予想外の所に飛んで来ると、上手くいかないね」 

俺「いつでもひじを曲げないで、綺麗に面を作って受けることを意識してみて」 


俺がそういうと、ミスをした子は顔をあげて「はい!」と構えた。 



【797】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 99  評価

さオ (2016年03月29日 13時16分)



 
話が終わると、奈央が勢い良く「集合!」と叫んで、部員たちが集まってきた。 

そして、先生が産休に入ること、 

俺が臨時のコーチ役をすることが伝えられた。 


先生の産休は大会の前のこのタイミングになってしまったとは言え、 

部員たちにも大方予想がついていた事のようで、 

みんな「先生お大事に!」とか「頑張ってね!」とか言っていた。 


かくいう俺の方は未知数のようで、取り立ててリアクションもなかった。 

一斉にお辞儀をして「よろしくお願いします!」と言われて、 

それが照れくさくて仕方がなかった。 



 
集合が解かれると、簡単なウォームアップがあって、各々が対人を始めた。 

先生に「見てあげて」と笑顔で言われて、俺は「はい」と答えて、 

対人をしている様子を見て回った。 


対人を見ていれば、フォームの癖とか、 

トスアップの精度とか、基本的な事がわかる。 

全体的に悪くはないし、女子なので基本はしっかりできていたが、 

やはりそこまで上手い、というわけでもないなと感じた。 


奈央は自分の事を「上手くない」と言い切っていたが、 

この中ではキャプテンを務めることもあって、やっぱり頭一つ上手いように見えた。 

「はい!」と掛け声をあげて、ひときわ頑張っているようにも見えた。 

バシン、というボールを弾く音と、キュキュキュ、 

とシューズの擦れる音が響いて、心地よかった。 


 

【796】

中断6  評価

さオ (2016年03月28日 18時22分)


 
今日は一旦ここまでにします。 

続きはまた明日書きに来ますね 

それでは 




あっし:


今度こそ本日中断。

一部、職場からうpしました。



もうすぐ100だなぁ。。。。


まだまだ、まーだまだまだ続くぜ。 ニャハハハ


では、またね〜♪


エログッズ売るより、閑古鳥つかまえて焼き鳥にしたほうが売れるだろうな。

捕まえられないのが残念だ。 ギャハハハ  寝よwww



【795】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 98  評価

さオ (2016年03月28日 18時17分)




先生「見てもらえたら、それは心強いけど」 

先生「これから大会まで一週間くらい、本当に見てもらえる?」 

その言葉を聞いて、俺の中で色々なものがフラッシュバックした。 


途中で辞めてしまった部活 

バレーをとったら何も残っていないと知ったあの日 

春高決勝で輝いてたあのエースの風 

出口の見えない勉強の毎日 

過去の幻影に追われて何もしたいことのなかった毎日 



そんな俺が、どういうわけか今、 

再び体育館の中に立って、「部活」をしようとしている。 


蒸し暑い、この体育館の中で、 

シューズの擦れる音が響くこの体育館の中で、俺がいた。 

先生のその質問に迷うことなく、 

「はい、全力でやりますよ」と答えていた。 


そう言うと、先生は笑って、 

「ありがとう。他の先生にも、それとなく話しておくから」と言ってくれた。 

俺は、再び与えられたこの時間で、一体何ができるんだろうか。 

そんな事を思っていた。 

 

【794】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 97  評価

さオ (2016年03月28日 18時13分)




他の子たちが各々ストレッチを始めたので、 

俺も端の方で軽くストレッチをしていた。 


すると、奈央が手招きして「来て」と俺を呼んだ。 

椅子に座った先生と、奈央を挟んで向かい合う格好になる。 

俺が「こんにちは」と挨拶をすると、先生は、 

「女バレの顧問の野方です」と笑って挨拶してくれた。 




先生「1君、だよね。奈央から聞いたけど、あなたがうちを見てくれるんだよね」 


俺「あ、はい。どの程度力になれるかは分かりませんが…」 


先生「ほんと、突然ごめんね。私がこんなんにならなきゃね」 

先生「今日も、旦那の車で送ってもらったんだけどw」 


先生はそう言って、自分のお腹を触って笑った。 


先生「明日から産休のつもりで、その間は他の部の先生に一緒に見てもらおうと思ってたけど」 

先生「それでも、バレーの中身のことまではカバー効かないからね…」 


俺「そうですよね…」 


先生と俺が会話をする間、奈央は一心に先生の方を見つめていた。 


 

【793】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 96  評価

さオ (2016年03月28日 18時12分)




奈央が倉庫のような所に駆け出して、一人でネットのポールを運んでくる。 


「あぶないよ!」と言ってすぐに手伝った。 

「いつも一人でやってるから平気」と言っていたが、足元はフラフラだった。 


体育館でネットを立てるなんて作業、もう何年ぶりのことだったろうか。 

ぎしぎしと軋むネットの音が何だか無性に心地よく感じた。 



そんな風にして、二人で準備を進めていると、 

他の部員たちも集まってきて準備を手伝い始めた。 

後から来た子たちは皆、俺の方を不思議そうな表情で眺めていた。 

俺も仕方なく、「こんにちは」と力なく会釈をするだけだった。 





奈央が後輩らしき子に、「あの人ですか?」と聞かれて困った笑顔を浮かべていた。 

俺のことを、いつ説明するつもりなのだろうか。 


そんな事を思っていると、 

入り口の方でバスケ部男子が「こんにちはー!」と次々に言い始めて、 

お腹の大きな一人の女性が入ってきた。 


歩きながら男子たちと談笑しているようにも見えた。 

それに気づくと、奈央はすぐさまその女性の元へと駆け寄っていった。 

恐らく、あれが女子バレーの部の顧問の先生なのだろう。 

奈央はそのまま先生と数分話していた。 

 
 

【792】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 95  評価

さオ (2016年03月28日 18時11分)




その中に降り立って、俺は少し胸が詰まる想いがした。 


そして、久々にやるぞ!と勇んで体育館履きを履こうとしたら、 

サイズが合わずまったく足に入らなかった。 


俺「靴が入らないんだけど」 


奈央「かかと踏んで履いちゃえばいいよ」 


俺「それはあぶないよ」 





俺がそう言うと、奈央は「もう」とむくれて体育館の入り口を指さした。 


奈央「入口の下駄箱に、忘れ物のシューズがいくつかあるから、使いなよ」 

それに「分かった」と答え、古ぼけた下駄箱から見繕って、 

シューズを履いて中に戻った。 


その間、奈央は体育館を仕切るネット越しに、 

ずっと男バスの様子を夢中で眺めていた。 


俺「準備、しないの」 


俺が声をかけると、不意を突かれたように「ああ、そうだ」とおかしな声を出した。 

 
 

【791】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 94  評価

さオ (2016年03月28日 18時11分)




奈央「私は部室に行って着替えてくるから」 

奈央「ちょっと、ここで待ってて」 


そう言われて、俺は駐輪場の自転車の脇で待っていた。 


止めてある無数の自転車や、目の前にあった水道などを眺めて、 

やっぱりここは高校なんだなぁ、としみじみとしてしまった。 

この中だけ、時間の流れ方が違うようだ。 


毎年沢山の生徒が卒業して、入学して、人はどんどん入れ替わるけど、 

この場所だけは、永遠に終わらない青春の時間が流れ続けてるんだ、と思った。 




数分待っていると、奈央が駆け足で戻ってきて「いこ」と俺を誘った。 



体育館は駐輪場のすぐ近くにあった。 

中からはすでに「バシンバシン!」とボールの音が響いていた。 

奈央はなぜか「後から入ってきて!」と言って俺を置いて中へ入った。 


少し待って入ると、バスケ部の男子がこちらを見て「ちわーーっす!」と仕切りに挨拶をしてくれた。 

体育館の特有の匂い。キュキュっとシューズの擦れる音。 

高い天井から注ぐ無数の照明。 



 

【790】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 93  評価

さオ (2016年03月28日 18時10分)




野球部はすでにグラウンドで「おい!おい!」と掛け声を上げてランニングをしている。 

俺の目の前を、弓を抱えた弓道部の一団が通り過ぎて行く。 

これから試合にでも行くのだろうか。 


かと思えば、何やら大きな荷物を抱えて歩いている屈強な男子たちともすれ違った。 

ラグビー部か、レスリング部…と言ったところだろうか? 


奈央は一足先に駐輪場に自転車を止めていた。 


奈央「ここ、私の隣に置いちゃっていいから。テキトーに」 


そう言われて、奈央の横に自転車をつける。 


俺「にしても、部活が盛んな学校なんだね」 


ここに来るまでに、一体どれだけの部活の子とすれ違っただろうか。 



奈央「まーね。一応伝統校だから、部活には相当力を入れてるよ」 

奈央「文武両道、とか言って勉強にもうるさいけどね」 


俺「へえ、立派な高校なんだね」 


俺がそう言うと奈央は、 

奈央「そんな事ないよ、この辺の子たちが集まってくる普通の高校だよ」 

と言ってはにかんだ。 


 

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