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【859】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 155  評価

さオ (2016年04月01日 11時14分)




スパイクを決めた奈央は、コートを駆け回って声を上げた。 

ピィ、と笛高らかにが鳴って、奈央たちが勝利したことを告げた。 


奈央はコートの中で涙目になり、まるで真夏の太陽のように、 

溢れんばかりの笑顔をこぼしていた。 

その太陽のような笑顔が、俺の心を照らした。 




瞬間、その光で俺の未来が見えた。 

俺は、はっきりと気づいてしまったのだ。 


この一週間、どれだけ楽しくて、 

今この瞬間、自分がどんな想いを抱いているか。 


夢が、できた。 


奈央の笑顔が、俺の夢への道を明るく照らした。 




【858】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 154  評価

さオ (2016年04月01日 11時13分)




笛が鳴る。こちらのサーブは綺麗に相手コートに飛んでいき、 

綺麗にレシーブが上がった。 

強いスパイクが返ってくる。 


しかし千景が上手くカバーにまわり、 

運命的とも言える綺麗なレシーブがセッターの元へと上がった。 


奈央「レフトォ!」 

レフトでは、奈央が待っている。 


体育館の中にいる全員が奈央を見ていたかもしれない。 





俺は「奈央、いけぇ!!」と叫んだ。 


奈央の待つレフトに、綺麗なトスが上がった。 

心臓が、バクリと大きな音を立てた。 



体育館じゅうの熱視線と光を浴びた奈央が、高く飛んだ。 

まるでストップモーションのように、コマ送りで時間が進んだ。 



奈央が打ったスパイクは、 

相手コートに叩きつけられた。 


その瞬間、全てが爆発したかのように、 

「わっ!!」と歓声が巻き起こった。 




【857】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 153  評価

さオ (2016年04月01日 11時12分)



 
セッターの子が懸命にトスを上げて、センターの子がフェイント気味に返した。 

そのフェイントが相手の虚を突き、1点返すことに成功した。 


「うわあああ!!」と歓声が湧いて、 

流れが一気にこちらへと戻ってきた。 


俺「よっしゃぁ!ナイスファイト!!」 




滑りこんでレシーブを上げた千景は、コート上で仲間に囲まれて笑顔だった。 

16-16だ。 


1点返したことで、後衛にいた奈央が前衛へと戻ってきた。 


俺「よっしゃ、もっかいこっから!落ち着いていこう!」 


俺はコート上に立つ6人に、懸命に声を送り続けた。 





こちらのサーブが通って、相手コートでレシーブが上がる。 

しかしトスが乱れて、相手のスパイクミスとなった。 


悲鳴にも似た歓声が湧き上がって、 

奈央たちはコートの中で飛び跳ねて喜んだ。 


ベンチにいた俺も、控えの子も、「おっしゃぁ!」と言って叫んでしまった。 

17-16。 

あと、1点だ。 

あと1点で、全てが… 



【856】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 152  評価

さオ (2016年04月01日 11時11分)




そんな切迫した状況の中で、こちらのサーブが失敗してしまい、 

15-16のスコアとなった。 


あと1点とられたら― 

チームの雰囲気が重くなって、大きなプレッシャーがかかる。 


エースの奈央は後衛にいた。 

全員が気を落としたその瞬間だった。 


奈央「大丈夫だよ!諦めないでいこう!!」 


奈央の今日一番のかけ声が、コート上でこだました。 




俺もはっとして、「大丈夫だ!!一本とるぞ!!」と声を出した。 


千景もそれに気づいて、「一本一本!落ち着いてこー!」 

と声を上げた。 


笛が鳴って、相手チームの痛烈なフローターサーブが飛んでくる。 

千景が思い切りフライングし、コートに転がりこんでキャッチした。 


場内に「おお!」とどよめきが湧いて、 

チーム全員が「あがったー!!」と声を枯らして叫んだ。 

 

【855】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 151  評価

さオ (2016年04月01日 11時10分)




俺「次のセットが、本当に最後なんだ」 

俺「みんな、楽しんでいこう!」 

俺がそう言うと、全員の「はい!」という力強い声が響いた。 


最終セットが始まる直前、奈央が俺の前に立っていた。 

ぐっと拳を握って、小さなガッツポースを作ってみせた。 


奈央「楽しんでくる」 


にこっと笑って、そのままコートの中へと駆けていった。 




瞬間、風が吹いた気がした。 

実際に吹いたかは分からないし、「吹き始めた」という方が、 

正しかったのかもしれない。 

ただ、本当に俺の心の中に熱い風が通り抜けた気がした。 



最終セットは大接戦だった。 

15点マッチの短い試合が、あっという間に15-15となった。 

ここまで来ると、体育館の中には大勢のギャラリーがいて、 

両校の応援も鬼気迫るものとなる。 


 

【854】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 150  評価

さオ (2016年04月01日 11時09分)




2セット目も出だしは調子が良かったが、 

千景のレシーブミスをきっかけに、徐々に調子を崩してしまった。 

全員の奮闘も虚しく、2セットは僅差で落としてしまった。 


しかし、みんなの様子は一つ前の試合とは違った。 


奈央「サーブカットがちょっと乱れてきてるね」 


千景「そうですね…私のミスがちょっと…」 


奈央「ううん、大丈夫。切り替えていこう!」 


「はい!」 



この状況になっても奈央もみんなも、笑顔を絶やさなかった。 


そうなんだ。 


バレーは楽しい。そういうものなんだ…… 


きっと、ずっと、そうで… 



そんな事を思って感極まり、しばらく黙って見守っていたが、 

すぐに声をかけた。 


俺「カットの時は、姿勢を低くして、膝は足首の前、だよ」 


「はい!」 


俺「大丈夫、決して流れは悪く無い」 

俺「みんな、すげー頑張ってるもんな?」 


「はい!」 




【853】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 149  評価

さオ (2016年04月01日 11時08分)




俺「よっしゃいいぞぉ!!」 

思わず大きなガッツポーズをしてしまう。 

それに続いて、控えの子達も「オッケー!」と言って立ち上がる。 


コートの中を走り回る奈央は満面の笑顔だ。 

千景がベンチの子たちに向かって嬉しそうに手を振った。 


奈央たちのチームの良さがふんだんに出ていた。 

これなら、きっといける…… 




一発目の奈央のスパイクで調子を得たのか、 

1セットはスムーズに取ることができた。 

戻ってきたレギュラー陣を全員で鼓舞する。 


俺「いいよ!この調子だ!!」 

俺「楽しんでいこうな!」 


円陣を組む部員全員に向かって渾身のかけ声をかける。 

「はい!」ときらきら輝く表情が返ってくる。 


俺が「いこうか!」と言うと 


奈央が「2セット目もこの調子でいくよ!」と叫んだ。 


「おー!!」というかけ声が力強く響いて、 

俺も「おし」と拳を強く握った。 




【852】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 148  評価

さオ (2016年04月01日 11時06分)




試合開始の瞬間、サーブカットを構える奈央と目が合った。 

俺は頷いて、「いけ」と声をかけた。 

奈央は真剣な眼差しで俺を見つめて、深く頷いた。 


試合は3セットマッチで、先に2セットとった方の勝ちだ。 

一発目のサーブカット、千景が良いキャッチをし、 

セッターの子の元へ最高のレシーブが返った。 




トスは奈央の待つレフト方向へと飛んでいき、 

チーム全員が「奈央!!」と叫んだ。 

俺も身体の底から「奈央、いけぇ!」と叫んだ。 


高く跳んで打ち込んだ奈央のスパイクは、 

ブロックの間をすり抜け、相手コートに叩きつけられた。 


瞬間、ワッ!と歓声が起こり、体育館中が沸き立つ。 

体中の毛穴が開くような、そんな興奮の一瞬。 




【851】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 147  評価

さオ (2016年04月01日 11時05分)




奈央「最後まで、頑張るからね」 

奈央はそれだけ言い残し、そのまま体育館へと戻って行った。 


その奈央の姿が印象的で、俺はしばらくその場から動けなかった。 

奈央の澄み渡ったその表情は、俺の胸を強くとらえたのだった。 


昼過ぎの良い時間帯、3位決定戦が始まった。 

初戦と違って、奈央もみんなも落ち着いているようだった。 

俺もドキドキはしていたが、これはすぐに「期待」の高鳴りだなと悟った。 




俺のここに来てからの全て、 

そして奈央の3年間の全てが、この一瞬に詰まっていた。 

泣いても笑っても、もう最後なのだから。 


「ピーーー」と主審の笛の音が体育館に響いて、 

両校の選手がネットに近寄る。 


俺もコート脇の監督席から、控えの選手とその様子を眺めていた。 

手を叩いて、「よっしゃいこう!!」と声をあげた。 

コートの中で千景も思い切り声を上げ、エンジンがかかった。 



【850】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 146  評価

さオ (2016年04月01日 11時04分)




千景「そうですよ!みんな、最後まで頑張りましょう!」 


「そうだよね、まだ次があるから!」 


「最後まで諦めないで頑張ろ!」 


奈央の気持ちが、チームを本来の「あの雰囲気」に戻していた。 


俺はその光景が嬉しくて、黙って眺めていた。 

奈央、えらいぞ。 


お前の頑張り、バレーを想う気持ち、それは絶対に返ってくる。 

そんな事を思いながら。 




集合が解かれて、部員たちが体育館の中に帰って行く時だった。 

奈央が一人で空を見つめたまま立ち尽くしていた。 

昼下がりの、強い光を帯びた空だった。 


俺「奈央、何してんだ」 

俺が声をかけると奈央は笑みを浮かべてこちらを見た。 

風が吹いて、奈央の短くなった前髪を揺らした。 


俺「奈央?」 




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