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【95】

それでも生きていこう…(3)

たいちょ。 (2006年12月13日 12時41分)

数ヶ月後。
いまだに笑顔を見せてくれる彼女を夕飯に誘った。
誘えた自分が誇らしく思えた。別の人間かと思った。

彼女の答えは
「もちろん、行きます。どこに連れて行ってくれるんですか?」

生まれて初めて、生まれて良かったと思えた。




告白した。
いろいろ考えて考えて…何度も練習して…。

それなのに、言えたのはたった一言。
「す…好きなんです。付き合って…ください…」
自分でも情けなくなるくらいしどろもどろだった。



「ごめんなさい。今は付き合うとか考えられないんです
 いろいろやりたいことがあるんです。」
彼女はそう言った。

悲しかったけど、妙に納得してしまった。
ある意味で嬉しかったのかもしれない。彼女の断り方が。

数ヶ月後、彼女は寿退社をした。
相手とは3年付き合っていたらしい。
結婚式には呼ばれなかった。


傷心…
そんな気持ちを抱くこともなかった。
「そんなもんさ。いつものことだろ。」
いつのまにか口癖になっていた。

仕事に命をかけよう。父親のように。
今はそれしかない。
仕事だけは俺を必要としてくれている。
…やることはたくさんある。

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【96】

それでも生きていこう…(4)  評価

たいちょ。 (2006年12月13日 12時44分)


「お前、この仕事向いてないよな?自分でもわかるだろ?
 辛いだけだぞ?こんな仕事続けても。まだ若いんだから
 転職でもしてみたらどうだ?」
ある時、上司から告げられた。

俺は馬鹿だけど、上司が何を言いたいのかは分かった。
次の日、辞表を出した俺に上司はうれしそうに
「お疲れさん!」

同僚たちはいつものように仕事をしていた。
いつも以上に忙しそうに。


その日夜遅くまで公園で時間を潰した。

家に帰った俺に、母親がいつもの笑顔で
「お疲れ様」といった。

「会社、辞めてきたよ」と言った俺に、一言。

「お疲れ様」
同じ笑顔だった。



数ヶ月前。
職を探していた俺が、いつものように家に帰ると母親がいなかった。

夜遅くに電話が鳴った。
病院からだった。
母親の声だった。
いつもの優しい声で、具合が悪くなったので医者に言ったら
入院するように言われたこと。今日はもう面会できないから、
明日必要なものを持って病院に来て欲しいことなどを告げられた。

次の日、保険証やら着替えやらをもって病院に行った。



癌だと、医者から告げられた。
末期の胃癌だったそうだ。
もう、助からないらしい。

いつものように優しい母親。
目を見ることができなかった。

一人で家に帰って、父親に告げた。
父親の前で泣くのは、これが2回目だった。

〜〜夕方につづく〜〜

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