| トップページ | P-WORLDとは | ご利用案内 | 会社案内 |
返信元の記事
【99】

それでも生きていこう…(5)

たいちょ。 (2006年12月13日 19時18分)

1ヶ月ほどたった日、母親がかすれた、それでも優しい声で言った。
「もう助からないんでしょ?分かってるのよ。」
俺は黙ってしまった。

母親はいつものように優しい声で
「どう?仕事は見つかりそう?」
話題を変えた。

俺は我慢しきれずに泣いてしまった。
母親はずっと俺の手をさすっていた。



数少ない親戚が久しぶりに集まった。
「あの人は本当に良い人で…」
「惜しい人を…」
どこかで聞いた台詞であふれていた。

俺は淡々と喪主を勤めた。



ここ数ヶ月、ずっと独りで、とても広く感じていた家。
その日からさらに広く感じた。

骨壷は思っていたよりも軽かった。

家に帰った俺は机の上においてあったノートを手にとった。
母親の病室の、枕の下から出てきたノートだ。



日記だった。
入院してから、1ヶ月くらいから、死ぬ2,3週間前までの。

その日記は父親との会話でつづられていた。
2,3日分の日記を読んで、泣いてしまった。
書かれているのは全部俺のことだった。

.

■ 390件の投稿があります。
39  38  37  36  35  34  33  32  31  30  29  28  27  26  25  24  23  22  21  20  19  18  17  16  15  14  13  12  11  10  9  8  7  6  5  4  3  2  1 
【100】

それでも生きていこう…(6)  評価

たいちょ。 (2006年12月13日 19時20分)


最後のページから数日前の日記。
その日記だけ、俺宛だった。


○○、あなたにずっと謝りたいことがあったの。
○○がいじめられていたこと、ずっと知ってたの。
でも、私は弱い人間だからただ優しくすることしかできなかった。
学校に行こうかとも思ったけど、行けなかった。
いつも○○が優しい顔で「今日も楽しかった」って言ってたから。
だれにも言わずにがんばっている○○を裏切れなかったの。


覚えてる?高校2年の頃。
私は酔ってあなたに言ってしまったね
「産んでごめん」って。
本当にごめんなさい。あのときは本当に思ったの。
あなたがこんなに辛い思いをしているのは私が産んだせいだって。
(中略)
私はあなたを産んで本当に良かった。幸せだった。
だから、あなたにも幸せになって欲しい。
あなたなら幸せになれる。お願いだから、なって。



俺は驚いた。
まさか、あそこまで潰れていた母親がそんな事を覚えてるとは
思ってもいなかったから。

ずっとそのことで悔やんでいたんだと思った。
優しくともすこし陰のある笑顔はたぶん、その後悔から来てたんだろう。



号泣した。
どこからこんなに涙があふれてくるんだろう?


死ぬことを考えていた俺は思った。幸せになろうと。




     「それでも生きて行こう」



.
39  38  37  36  35  34  33  32  31  30  29  28  27  26  25  24  23  22  21  20  19  18  17  16  15  14  13  12  11  10  9  8  7  6  5  4  3  2  1 
メンバー登録 | プロフィール編集 | 利用規約 | 違反投稿を見付けたら