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【157】 | コピペ 39‐1 彼女のお守り 真比呂 (2009年02月27日 22時02分) |
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初めて彼女にあったのは、内定式のとき。同期だった。 聡明を絵に書いたような人。学生時代に書いた論文かなん かが賞を取ったこともあるらしく、期待の新人ということだった。 ただ、ちょっときつめ&変わった人で、やることすべてパーフェ クトだし、自分のことはなんにも話さないので、宇宙人ではない かとの噂もあった。 まあ美人と言えば美人なんだけど、洋服とかおしゃれに気を使 わないようだったし、クソまじめだし、お高くとまってるというより 男嫌いみたいだった。近寄る男はいなかった。 おいらも、なんかちょっと嫌いだった。 彼女とは、偶然同じ部署に配属になった。 それまで出会ったどんな女の人とも違うので、からかって反応 を楽しむようになった。はじめは、すごく嫌がっていた彼女だっ たが、半年も経つと馴れてきたのか、そのころおいらが結婚し たんで安心したのか、少しづつ相手をしてくれるようになった。 650 :649 :04/05/16 18:22 ID:aQPXgC2a その後、ちょっとだけ仲良しになって、愚痴を言い合ったりする ようにはなったが、相変わらず自分のことは、何にも話さない。 休日何をしているかとか、家族のことはもちろん、本人のことも、 例えば誕生日なんかも、何年間か知らなかった。 ある日、ある試験の申し込み書類の書き方を聞いたら、自分 の書類をもって来て見せてくれた。そこに、生年月日が書いて あった。なんと、その日が誕生日だった。 今日はデートかなぁ?などといいつつ、とりあえず、昼休みに 食べたチョコエッグに入ってたカメを誕生日プレゼントと言って 渡した。爬虫類大好きと言って子供みたいに喜んでいたのが 印象的だった。変わってるなぁと思った。 確かに変わった人で、いまどき携帯は大嫌いとかで、持ってな かった。写真を撮られれるのも大嫌いだった。カメラ付き携帯で 飲み会のとき撮影したら、すごく怒って、しばらく口をきいてくれ なかったこともあった。無理やり一緒にプリクラ撮ったときは、 悪用されるといやだからと言って、シートごと全部持っていって しまった。 651 :649 :04/05/16 18:23 ID:aQPXgC2a 彼女は、がんばりやだった。もともと才能もあったし、がんばる もんだから、どんどん出世していった。それにほとんど遊ぶこ ともなく、仕事がおわるとまっすぐ家に帰っていた。そんなに、 お金ためてどうすんのー?お父さんの借金でも返ししてんの? などとからかった。 そのころには、彼女のことがとても好きになってしまっていた。 でも、おいらはもう子持ちなので、表に出さないようにぐっとこら えていた。ただ、彼女の周りをうろちょろして、愚痴の聞き役や、 遅くなったときのタクシー代わりをしていた。でも、プライベート な関係は一切無かったし、変な噂にならないように気を配った。 同僚は、おいらは彼女の「ぽち」に見えると言っていた。自分も 彼女の「ぽち」という立場が気に入っていた。 そんな関係がしばらく続いた。彼女は、相変わらず独身だった。 彼氏や恋人がいるかどうかは全然分からなかった。ただ、彼女 は、お守りみたいな、小さな袋をいつもバックにつけていた。何か 聞いても、秘密のお守りとしか教えてくれなかった。彼女が仕事 のトラブルで落ち込んでいたとき、彼女のデスクでそのお守りを ギュッとにぎっていたのを見たことがあった。だから、勝手に遠く にいる彼氏からもらったのかな?などと思っていた。 |
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【158】 |
真比呂 (2009年02月27日 22時03分) |
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これは 【157】 に対する返信です。 | |||
652 :649 :04/05/16 18:23 ID:aQPXgC2a ある日、海外出張からの帰り、成田で携帯の電源を入れた とたんに同僚から電話があった。彼女が亡くなったと言わ れたとき。全身の力が抜けた。みみの奥がキーンと鳴った のを覚えている。交通事故だった。事故直後は、意識もあり、 たいしたことはないと思われたらしいが、内臓からの出血が あり、急変したとのことだった。 現実のこととは思えずに、なぜかあまり、涙もでてこなかった。 職場の何人かで、葬儀の手伝いをした。そのとき初めて知っ のだが、母子家庭だった。お姉さんもいるが、施設に入って いるとこのことだった。彼女が大黒柱として家族を支えていた のだ。彼女を軽率にからかったりしたこと恥じた。とても申し 訳なくて気が狂いそうだった。 葬儀の後、帰ろうとしていると、彼女のお母さんに呼び止めら れた。渡したいものがあるから彼女の実家にあとで一緒に来 てほしいと言われた。貸していた本のことかな?と思いつつ 彼女の母親と実家に向かった。 母親は、道すがら、彼女は大好きだった父親が出て行ってから 男の人が嫌いになったこと、誰にも頼らないで自分の力で生き ていこうと誓ったこと、土日はあまり健康でない母親と、施設の 姉の世話をしていたことを話してくれた。自分の子供とは思えな いほどがんばりやだったと。 653 :649 :04/05/16 18:24 ID:aQPXgC2a 家に着くと、彼女の部屋に案内された。きれいに片付いていた、 というより女性の部屋とは思えないくらい何も無かった。ただ、 専門書とノートがたくさんあった。母親は、彼女がいつもおいら の話を楽しそうにしていたこと、おいらのことが大好きだったけど、 おいらの子供たちを自分のように悲しませることになるといけな いと思い黙っていたこと、彼女が意識を失う直前に、おいらに会 いたいと言っていたことを話してくれた。机のすみにおいらと写っ たプリクラが貼ってあった。声を出して泣いたのは、大人になっ てから初めてだった。 帰るとき、彼女が亡くなったとき身につけていたネックレスと、 いつも持ち歩いていたお守りを形見にもらった。そばにおいて やって下さい。と言われた。ネックレスは母親が就職記念にあ げたものだった。ただ、お守りのほうはどう手に入れたか分か らないということで受け取るのはちょっと気が引けた。 でも、彼女がとても大切そうににしていたのを知っていたので、 受け取ることにした。お守りの中を開けてみようとも思ったが、 やめた。 それからすぐ転職をした。一年後、ようやく少し落ち着いた。 形見のお守りは、いつも彼女がしていたようにかばんにつけて 持ち歩いていた。先日、職場の女の子が、 「これ前から気になってたんですけど、何が入ってるんですか?」 といい、かばんのお守りを開けてしまった。とめる間もなかった。 というより、そういったときはもう中身を取り出していた。彼女は、 突然、なにこれー?といって大笑いを始めた。 お守りの中には、チョコエッグのカメが入っていた。 おいらは、もう、職場にいることも忘れ、ただただ泣き続けた。 |
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