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コピペ 17-5 クレヨンしんちゃんの13年

真比呂 (2008年12月27日 15時13分)
36 名前:第三話(4/4) ◆TmK8dn3Gxg  2間違えた… sage 投稿日:2006/04/07(金) 01:56:13.74 ID:60VRmiQN0
しんちゃんがこっちを見た。
しばらく目をきょろきょろさせたあと、僕を見付けて、顔をくしゃくしゃにさせる。
「シロ。」
名前を呼ばれた。本当に、ひさしぶりに。

わん。

なんとか声が出た。本当に小さくて、ガラスごしじゃあ聞こえないかと思ったけれど。
でも、たしかにしんちゃんには届いた。
しんちゃんが近付いてくる。窓を開けて、僕に手をのばして。
「大丈夫、オラが、何とかしてやるぞ。」

やっと抱きしめてくれたしんちゃんの胸は、いっぱいどくどく言っていて、
夢の中の何十倍も、とってもあったかかった。
ねえ、よごれたわたあめでも。

39 名前:第四話(1/6) ◆TmK8dn3Gxg  どこまでいけるかな… sage 投稿日:2006/04/07(金) 01:58:12.06 ID:60VRmiQN0
僕は夢を見る。
何度目になるかはわからない夢。でも、それは今までとはちがう夢。

41 名前:第四話(1/6) ◆TmK8dn3Gxg  どこまでいけるかな… sage 投稿日:2006/04/07(金) 01:58:27.31 ID:60VRmiQN0
僕は段ボール箱に入っていて、そのはじをしんちゃんがヒモで三輪車に結びつけている。
三輪車がいきおいよく走る。
箱ががたがたゆれて、ちょっときもちが悪い。
ふいに、その箱から引っぱり出され、僕は自転車のかごに乗せられた。
小さな自転車。運転しているのはしんちゃん。せなかにはまっ黒なランドセル。
シロに一番に見せてやるぞって、嬉しそうにしょって見せてくれたランドセル。
まだまだ運転は下手だったけど、とってもあたたかかった、春。

42 名前:第四話(3/6) ◆TmK8dn3Gxg  又間違えた… sage 投稿日:2006/04/07(金) 01:59:03.35 ID:60VRmiQN0
自転車のかごが一回り大きくなる。
くるりとまわると、しんちゃんが今度は、まっ白なシャツを着ていた。
自転車も、新しくなっている。もうよたよたしていない。スピードも、速い。
そういえば、よくお母さんに怒られたとき、
ナイショだぞって僕を、こっそりフトンの中に入れてくれたよね。
もちろん次の日には、お母さんに怒られるんだけど、それでもやめなかった。
二人だけのヒミツがあった、きらきらしてまぶしい、夏。

43 名前:第四話(4/6) ◆TmK8dn3Gxg 投稿日:2006/04/07(金) 01:59:41.64 ID:60VRmiQN0
ぼんやりしていたら、ひょいっとかごから下ろされた。
代わりに自転車を押しているしんちゃんのとなりに並んで歩く。
しんちゃんはずいぶん背が伸びて、お父さんと変わらないくらいになった。
お母さんといっしょに使っている自転車が、ぎしぎしと音を立てる。
でも、どんなに大きくなっても、きれいな女の人に目がいくのは変わらない。
こまったくせだなあと思いながらも、どこか安心してる僕がいる。
いつまでも変わらないでいて欲しかった、少しだけ乾いた風が吹く、秋。

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コピペ 17-6 クレヨンしんちゃんの13年  評価

真比呂 (2008年12月27日 15時14分)

44 名前:第四話(5/6) ◆TmK8dn3Gxg 投稿日:2006/04/07(金) 02:00:07.68 ID:60VRmiQN0
寒い冬。
あんまり話してくれなくなった。
おさんぽも、少なくなって。こっちを見てくれることも少なくなった。
見えるのは横顔だけ。
楽しそうな、悲しそうな。ぼんやりした、困った。怒っているような、悩んでいるような。

そんな、横顔だけ。

寒い冬。小屋の中で、ひとりで丸くなっていた、冬。

45 名前:第四話(6/6) ◆TmK8dn3Gxg 投稿日:2006/04/07(金) 02:00:29.17 ID:60VRmiQN0
寒かった冬。でも、冬は春への始まり。あたたかな春への始まり。
僕は丸まって、わたあめのようになって、あったかいうでの中で。
春の始まりをまっている。

たとえそれがほんのいっしゅんのものでも。

48 名前:第五話(1/6) ◆TmK8dn3Gxg 投稿日:2006/04/07(金) 02:02:11.66 ID:60VRmiQN0
かしゃん、という、なにかがたおれる音がして、僕は目を開けた。
電灯がぽつりぽつりとついた、暗い道の真ん中で、見なれた自転車が横になっている。
のろのろと首を上げると、しんちゃんの前髪が顔に当たった。
道のはじっこのカベに、もたれかかるようにしてしゃがみ込むしんちゃん。
その体はひっきりなしにふるえていて、とても寒そうだった。
僕を抱きしめたまま、動こうとしないしんちゃん。
しんちゃんに抱きしめられたまま、動くことができない僕。

ああだれか僕の代わりに、しんちゃんを抱きしめてあげて。

49 名前:第五話(2/6) ◆TmK8dn3Gxg 投稿日:2006/04/07(金) 02:02:35.86 ID:60VRmiQN0
「ごめんな、ごめんなシロ。オラ、何にも出来なかった。」
ぽつりぽつりと、しんちゃんが話しかけてくれる。
「いっぱい病院回ったんだ、でも、どこも空いて無くて。
 空いてるトコもあったんだけど、大抵シロを一目見ただけで…何も。
 あいつらきっとお馬鹿なんだぞ。お馬鹿だから、何にも出来ないんだ。」
しんちゃん、泣いてるの? ねえ、泣かないで。
「でも、ホントにお馬鹿なのは……オラだ。」
しんちゃんなかないで。
「オラっ……シロがこんなになってるの、気付かなくて…!!
 ずっと、一緒にいたのに…親友だって……思ってたのに、なのに!!!」
なかないで、もういいから。
「シロっ…………。」

50 名前:第五話(3/6) ◆TmK8dn3Gxg 投稿日:2006/04/07(金) 02:03:01.37 ID:60VRmiQN0
しんちゃんが泣いている。僕はなにもできない。
せめて元気なところを見せようと思って、僕はしんちゃんのほっぺたをなめた。
しんちゃんのほっぺたは、少しだけ早い春の味。

51 名前:第五話(4/6) ◆TmK8dn3Gxg 投稿日:2006/04/07(金) 02:03:28.44 ID:60VRmiQN0
僕がメスだったら、しんちゃんのために子供を作っただろう。
僕が居なくなっても、寂しくないように。
僕がわたあめだったら、しんちゃんのためにせいいっぱい甘くなっただろう。
僕が食べられても、甘さが少しでも長く口にのこるように。
僕が人間の手を持っていたら、しんちゃんを抱きしめただろう。
僕がしんちゃんにもらった、温もりを返すために。
僕が人間の言葉をしゃべれたら。

きっと、いっぱいいっぱいのありがとうとだいすきを、君に。
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