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【96】

アンマンと呼ばれた男(序章)  評価

ただ者 (2020年06月11日 16時48分)

これは、激動の時代を駆け抜けた、ある悲しい男の物語である。

彼の名は、安藤 万寿夫(アンドウ マスオ)
通称、安万(アンマン)

もし生きていれば、今年で65歳になる(いや、普通に生きてるでしょ)

彼は私の元上司というか先輩。でも部署が全く違っていたため、入社してからしばらくの間は、私は彼の存在を知らなかった。

でも、22の時、たまたま一緒に仕事をする機会があり、私は初めて彼の存在を知った。

当時、彼はすでに39才。つまり、私の倍近くも生きている大先輩。

そんな彼の第一印象は、『変わった人』だった。

この時点では、あくまで一個人の印象に過ぎないのだが、よくよく考えてみると、第一印象というのは実はすごく大事で、それが後々まで影響したり、また、それが当を得ていることも多々ある。

彼の場合もやはりその通りで、周りのみんなからもそう思われていたようだ。

彼は本当に口数が少なかった。自分から話かけることはほとんどなく、また、話しかけられても、その対応はいつもそっけないものばかりだった。

まぁ、周りからしてみれば、本当にとっつきにくいタイプだったと思う。
だから彼には、親しい友人というか、友達が全くいなかった。というより、基本的に誰も相手にしていなかった。

でもなぜか、私はそんな彼のことが気になっていた。

話しかけても、『ほっといてくれ』と言わんばかりに、本当に煙たそうに、本当に面倒臭そうに対応するのだが、なぜかそこに不快感というか嫌味を感じないのだ。

そこに引っかかった。

もしかして、彼は本当は、誰かにかまってほしいんじゃないかと。

それから私は、ことあるごとに彼との接触を試みた。
相変わらずのそっけない対応ばかりだったが、やっぱり内心は嬉しいんじゃないかと感じる部分があった。

そしてそれが確信に変わる。

「アンマン、今日昼飯一緒に行こう」

「また来たのか。つーか何でお前までアンマン呼ばわりしてんだよ。一歩間違えば、親子であっても不思議ではないくらい年が離れてんだぞ」

「いや、アンマンに限ってその間違いは起きないでしょ」

「この野郎(笑)」

この頃から、急激に距離が近くなっていったと思う。いつしか、彼のほうからよく話しかけるようになっていた。

出世とは無縁の彼だったが、貯金が3000万以上あると誰かが言っていた。

たしかに、酒もたばこもギャンブルもやらない。もちろん女もいないし、とてもじゃないけど女遊びをしているようにも見えなかった。
特に意識しなくても、自然にそれくらいのお金が貯まっていったのかもしれない。

でも私の中で、一つだけ勘違いがあった。

「アンマンさ、そんなにお金貯めてどうすんの?お金はないと困るけど、何か楽しいこと見つけたほうがいいんじゃない?」

「ただ者、お前オレのこと全然わかってないな。明日の夜ヒマか?明日の夜7時に駅のロータリーで待ってろ。あっ、ジーパンはダメだからな、正装でこいよ」

うーん、どういうことだろう・・・オレの知らないアンマンがまだいるってこと?

そしてなぜ、オレがベストジーニストって知ってんだ?(いや、誰も知らんて)

まぁ、それも明日わかるか。
【95】

アンマンと呼ばれた男(第二章)  評価

ただ者 (2020年06月11日 16時34分)

次の日、ロータリーで待っていると、ピカピカの黒い車が私の前で止まった。アンマンだった。
車はホンダレジェンドの一番グレードの高いやつ。当時でたしか500万くらいしたと思う。

さすがに金持ってんなぁ。

そして、中に乗り込むといつもと違うアンマンが。

いつもは何とも見栄えのしないアンマンだが、この日は違った。髪を逆立て、ジャケットの下のシャツは大きく胸元を開いている。
ほぉ、人って格好でこんなにも印象変わるんだな。

繁華街に車を止め、アンマンが連れていってくれたのは、なんと高級クラブだった。
半年くらい前、会社のお偉い方の接待で来たという。それからハマってしまったみたいだ。

お店に入ったとき、私みたいに若い人は本当に珍しいと言われた。というより、一見さんは基本的にお断りしていると言う。

この店への入り口は、常連さんと一緒に行って顔見知りになることから始まるらしい。

こりゃたしかにジーパンじゃ断られるな。

早い時間だったせいか、お客さんは私たち以外には誰もいなかった。だからかどうかはわからないが、男2人に対し、女の子が8人もついた。
しかしさすがは高級クラブ。よくもまあ、こんなにも綺麗どころばかり集めたもんだ。まさにラブ嬢。

とりあえず、最初にチャームとしてフルーツ盛り合わせが私とアンマンに一盛りずつ出てきた。これはそういうシステムらしく、それが一盛り6000円。マジか・・・

それから1時間ほど楽しい時間を過ごし、これからってときに、アンマンがもう行こうと言いだした。

「えっ?だってまだこれからじゃん」

「オレが連れてきたかったのはここじゃないんだ」

え?もしかしてもっとすごいところ?アンマン様、ス・テ・キ(ポッ)

お会計はしめて5万6000円なり。マジっすか・・・
大して飲んでないし、1時間しかいなかったんですけど(汗)

まっ、女の子一人の連絡先ゲットしたからいいか・・・ってちゃうちゃう、そんな問題じゃない。

でもアンマンは安いもんだと言わんばかりに平然とお金を払う。

「アンマン、オレ、そんなにお金持ってないんだけど・・・」

「心配すんな、オレが誘ったんだ。今日はオレが全部払う」

アンマン様、やっぱりス・テ・キ(ポポポッ)

さあ、今度はどんなすごいところに連れていってくれるのかと思いきや、行った先は普通のスナック。いや、ちょっとだけ高級そうなスナック。

聞けば、さっきのクラブのママが経営しているスナックらしい。たしかに名前が同じだ。
でもかなり期待していただけに拍子抜け。少しばかり意気消沈して中に入る。

「いらっしゃいませ〜、あっ、アンマン、今日は早いじゃん。あれ?もしかしてただちゃん?」

はい?ただちゃん?

「アンマン、どゆこと?っていうか、ここでもアンマンって呼ばれてんの?」

「知らねえ、そしてうるせえ」

と、それはさておき、私は一発でわかりました。その子がアンマンのお目当てであることが。

クラブの子を含めても明らかにダントツ。
アンマンが惚れるのもムリはない。

つーか、身の程知らずもいいとこじゃない?もっと身の丈に合ったお相手を・・・

いや、夢を見るのが男のロマンであり仕事。それはそれでいいのかもしれない。
【94】

アンマンと呼ばれた男(第三章)  評価

ただ者 (2020年06月11日 16時23分)

彼女の名は真美ちゃん。あっ、源氏名ね。奇遇にも私と同い年。

早速アンマンは真美ちゃんにプレゼント。高級そうな小っちゃい箱を手渡した。中身はイヤリング。

「ありがと〜、うれし〜」

そりゃ嬉しいでしょうよ。結構な値段するんだろうなぁ。

それから楽しいひととき。こんなに楽しそうに話すアンマン初めて見た。

アンマン、あんた今、めっちゃ輝いてるよ(キラッ)

と、そこでアンマンがトイレに立った。するとすかさず真美ちゃん。

「ただちゃん、本当にアンマンの友達なの?頼まれて仕方なく来たんじゃない?」

「はい?」

「ほら、アンマンあんな感じじゃん。私友達絶対いないと思ってたの。それで聞いたのよ、友達いないでしょって。そしたらアンマン、普通にいるって言うの。私が絶対嘘って言ったら、今度親友連れてくるって言ったのよ。それがただちゃん」

「うん、アンマンとは本当に親友だよ。っていうか普通、面と向かって友達いないでしょなんて聞かないでしょ」

「それにはちょっとした訳があるのよ。アンマンがこの店に来るようになってから結構経つから、色々あったの。でもただちゃん、本当に友達なんだね。こんなまともな友達いるなんて、アンマンちょっと見直した」

・・まともな友達って、あーた(汗)

「あっ、そうそう、もしかしてアンマン、いつもプレゼントしてたりするの?」

「そうなのよ、ほぼ毎回プレゼントくれる。もう20個、いやもっとかな。いっぱいもらった」

「いやん、このモテ子ちゃん。この、このぉ〜」

「ここだけの話なんだけど、本当は迷惑してるのよ。ほら、だっていつ来るかなんてわからないじゃない。あんまりつけたくないんだけど、でももらった物身につけてないと何か悪いし。毎日何か一つは身につけるようにしてるんだけど、結構気を遣うのよ」

・・たしかに(汗)

「そしてたまにバラの花束とかもらうんだけど、これがすごく恥ずかしいの。カッコいい人からだったら鼻高々だけど、アンマンじゃ逆に恥ずかしい」

・・たしかに(汗)

「あと一番怖いのが、最終的に『あんなにプレゼントしただろ』って逆ギレされたらどうしようって。それがすごく心配なの」

・・たしかに(汗)
あっ、いや、さすがにそれはないでしょ。

そしてアンマンが帰ってきた。

「ただちゃん、今の話、絶対内緒だかんね」

・・いや、そんなこと、口が裂けても言えませんよ(汗)

・・でも、会話している二人を見ていると、真美ちゃんも本当に楽しそうなんですよ。
それはやっぱり魔性の世界だからなのか、はたまた照れ隠しであんなことを言っているだけなのか・・・

皆さんはすぐに前者だということがわかると思いますが、若かった私は、もしかしたら後者なんじゃないだろうかと思ってしまったわけです、はい。

そして私は一つの野望を打ち立てます。

・・もうお気づきの方もおられると思いますが、実は私、めっちゃ綺麗な人とか、すごく整った顔をしている女の子って、ちょっと敬遠してしまうというか、あまりタイプじゃないんですよ。

そう、私の野望というのは、真美ちゃんみたいな綺麗な子が、こんな若くて可愛い子が、アンマンの彼女だったらすごいだろうなって。

みんなめっちゃ羨ましがるだろうし、絶対みんなアンマンを見直す。そうなったら、アンマンを取り巻く環境も大きく変わるだろうし、おもしろいだろうなって。
【93】

アンマンと呼ばれた男(第四章)  評価

ただ者 (2020年06月11日 16時12分)

それから私たちは、結構な頻度でそのスナックに通いました。
といっても、そのほとんどがアンマンのおごりだったですけどね(笑)

決め手は一途な思いとやさしさ、これで絶対振り向かせる。

・・だって、それ以外に売り込める要素がアンマンには一つもないんですもん(涙涙)

それから私のいたちごっこが始まる。

アンマンと話している本当に楽しそうな真美ちゃんを見てると、何とかなりそうな気がする。

でも、アンマンがトイレに立つたび、すごいのをぶっこんでくるんですよ(汗)

一体どっちが本当の真美ちゃんなんだ?

あっ、そうそう、言い忘れてましたが、2回目に来店したとき、私、真美ちゃんから連絡先告げられたんです。

最初は、私からアンマンにこっそり教えてもらいたいのかなぁなんて思ったりもしてました。
本当にアホみたいな話なんですけど、そう思っていたんです。

「ただちゃん、なんで連絡くれないの?」

「あっ、いや、別に話すこともないし・・」

「何それ、ひっど〜い」

「あっ、いや、何を話せばいいのかよくわからなくて(汗)」

「いつもいっぱい話してるじゃん。っていうか、何でもいいのよ、内容なんて。ただちゃん、女の子の気持ち、全然わかってないなぁ。あっ、ただちゃん、今度遊園地行こうよ、ね、行こ」

真美ちゃんこそ、アンマンの気持ち全然わかってない。プレゼントあげることくらいしか思いつかない不器用な男だけれど、本当に一生懸命なんだよ。

んっ?ちょっと待てよ。これはチャンスかも。いや、絶対チャンスでしょう。

「うん、わかった。空いてる日わかったら連絡するから」

「やった、私お昼はいつでも大丈夫だから」

そうです、トラブルメーカーの本領発揮です。

今考えれば本当にバカなことをしたと思うんですけど、このときの私には、一世一代の大チャンスとしか思えなかったのです。

「アンマン、なんか真美ちゃん、アンマンと遊園地行きたいみたいだよ」

「何でお前がそんなこと言うんだ?」

「あっ、いや、はっきり言われた訳じゃないんだけどさ、直接言うのが恥ずかしかったんじゃない?」

「本当か?まさかお前、横取りするつもりじゃねぇだろうな」

・・横取りって、あーた、物じゃないんだからさ(汗)

「んな訳ないじゃん」

「2人でか?」

「あっ、いや、オレも・・・」

「何で?」

「2人っきりじゃ恥ずかしいからって」

「真美ちゃんがそう言ったのか?」

「・・うん、そんな気がする」(声ちっちゃ)

「なんか怪しいな、なんか隠してるだろ?」

「・・・いや、別に」

「まあいい、変なこと企んでたら絶対許さないからな」

「わかってるって」
【92】

アンマンと呼ばれた男(最終章)  評価

ただ者 (2020年06月11日 15時59分)

さあ、運命の日、アンマンの車で待ち合わせ場所に着くと、いました、いつもの3倍綺麗な真美ちゃんが。

こりゃいい年こいたオッサンも夢を見たくなりますよ。

助手席を勧めたんですが、かたくなに拒むので、仕方なく私が助手席へ。

途中、コンビニに立ち寄る。

「なんか飲みもん買ってくるわ」

さすがアンマン、気が利く。よっ、この男前。

でもアンマンが車を出た途端、車内は修羅場と化す。私は足を思いっきりツネられました。

「痛っ!!」

いや、本当にもうシャレになんないくらい痛かったです(涙)

しかもすっごいおっかない顔で私を見てるんですけど(汗)

「ただちゃん、さいってい。マジ信じらんない。マジ最悪」

え?

「なんで連れて来たの?」

「あっ、いや、多いほうが楽しいじゃん」

「じゃあなんで言わなかったのよ、黙って連れてくるなんて卑怯よ。軽蔑する。本当、最低」

・・・当たり前ですよね、当然ですよね。

その後も真美ちゃんは終始不機嫌。そして遊園地に着くやいなや、体調が悪いと言い出す始末。早々に切り上げ解散。

それからしばらくして、真美ちゃんはお店を辞めました。

そして、アンマンからの執拗な質問攻めにあったのは言うまでもありません。

アンマンは私のことを、信用ならない男、裏切る男、騙す男、とにかくもう絶交だと思ったことでしょう。
はっきりとは言いませんでしたが、それ以来、アンマンと話すことはありませんでした。

それからまたしばらくして、一本の電話が。

「やっほー、真美でーす」

・・・声を聞けばわかります。

「真美、お店辞めたんだ」

・・・いや、知ってますって。

「誰のせいでしょ?」

・・・はいはい、私でございますよ。

「じゃあただちゃんは何をすればいいでしょうか?」

・・・えっと、土下座でしょうか?

「ブッブー、これから毎日真美に電話くださーい」

・・・罰ゲームですか(汗)

まぁでもそりゃそうでしょうよ。真美ちゃんほどの綺麗な子にこんなこと言われて嬉しくない男はいないでしょうよ。

でも私はね、傷心なんですよ、ハートブレイク、わかります?
いくら自業自得とはいえ、全部自分が悪いとはいえ、傷ついているんですよ。

多分私はもう、連絡しないと思います。

間違ってるけど、これが私のけじめの取り方なんです。

アンマン、そして真美ちゃん、本当にごめんなさい。そして、本当に申し訳ありませんでした。

その2年後、私は転勤し、アンマンとは一度も会っていません。

アンマン、あの時は本当にごめん。言い訳にしかならないけど、ここに書いたことは全て本当です。もう時効だから許してね。

そしてほら、もしあのまま続いてたらアンマン、破産してたかもしれないし(また余計なことを・・・)

アンマン、オレは今でもアンマンのこと、親友だと思っています。

いつかまた会える日を、そのときを信じて・・
【91】

乙女心と真偽の狭間  評価

ただ者 (2020年06月11日 14時11分)

大変身を遂げた妖精の話。

あれは28のとき、出会い系サイトで知り合った19歳の短大生。一人暮らしの彼女の家に初めて泊りに行ったときのこと。

あっ、最初に少しだけ言い訳させてもらいますが、私は出会い系サイトで会うときは、いつも年齢を誤魔化していました。

騙すつもりなんて毛頭ありません。でも19の女の子と会うのに、28は取っ掛かりのハードルとしてはすごく高いんですよ。

年を言っただけで連絡途切れるみたいな。

だからこのときも21と言っていました。というより普通にそれくらいに見られてたんですよ。だから会っても特に疑われない。

そしてある時点をもって正直に言うんですけど、最初は信じてくれない。「なに言ってんの(笑)」って。

そして私は免許証を見せる。その後の対応はほぼみんな同じでしたね。
それを理由にフラれたり嫌われることはありませんでした。

みんなここぞとばかりに、ウソをついた罰としての半ば強制のおねだり攻撃。何度指輪を買ったことか(涙)

では話を戻します。

彼女の部屋に入ると、机の上に写真が飾られていました。でもおかしい。その中にその子がいないんです。

「これなんで奈美(仮名)写ってないの?」
「これ私だよ」
「えっ?」

そう、そこに写っていたのは今の彼女とは全くの別人。
整形していた訳ではありません。
そう、化粧だけで大変身していたのです。

その最たるものはやっぱり目ですかね。奥二重で細い目が、今はこれでもかってくらいパッチリお目目になっています。

これには本当にびっくりしました。完全に別人ですよ、マジで。素顔を見るまで信じられませんでした。

そうなんです、それまで彼女は一度も私に素顔を見せたことがなかったのです。

シャワー浴びても化粧は落とさない。「化粧くらい落とせば?」と言っても、「面倒くさいから」と言ってそのまま。

何が面倒くさいのかよくわかりませんでしたけど、「そんなもんかな」と特に気にもしていませんでした。

まぁまつ毛がカッチリしてたので、多少は変わると予測はしていたんですが、こんな全くの別人になるとは夢にも思わなかったです、はい。

正直それまでにも結構印象変わるなと思った子はいたんですが、さすがに本人かどうかわからなくなる子はいませんでした。

本当にそのときのショックって言ったらハンパなかったです。

あっ、その子の顔のことじゃありませんよ。正直、私的には素顔のほうが好みでしたし、なんであんなパッチリお目目にしてたんだろうって。

ショックだったのは、化粧一つでこんなにまで変われるという事実。何度も言いますけど本当にびっくりでした。

・・でもね、結局は私と同じだったんですよ。

中身を含めた本当の自分を知ってもらうために、最初の時点で切られないように、一生懸命努力していたんです。

そしてこの日、全てを明かすと決めていたんです。だからわざと机に写真を置いた。

それがわかったとき、すごく胸が苦しくなったのを覚えています。

皆さん、女性の化粧は決して人を欺こうとか、自分を誤魔化しているわけではありません。

女性の化粧は、周りに対する最大限の配慮なのです。そしてそれは、とても尊い、切ない思いでもあるのです。

私はあのときから、そう思うようになりました。

まっ、一つの物の考え方として、ね。
【90】

なくした記憶  評価

ただ者 (2020年06月10日 17時19分)

若い頃はよくスナックとか行っていた。
あの頃は毎日が本当に楽しかった。

夜の繁華街に繰り出したときは、待ち合わせして、バイト終わった飲み屋の女の子とよく居酒屋とかカラオケとか行ったりしてた。

若いときはどんなに飲んでも記憶がなくなるということはなかった。

だから私は、ずっと冗談だと思っていた。
よく、飲んで記憶がない、覚えてないって言う人がいるが、誤魔化してるだけだと思っていた。
んなわけないだろ、しらばっくれるなよって。
でも私もある時期から記憶が飛ぶようになった。
・・本当だったんだ、申し訳ない。

あれって、寝ちゃうから飛ぶんだよなぁ。

どんなにべろんべろんになろうが、朝まで飲んでいようが、そのままパチンコ行った日はちゃんと覚えてる。

寝てしまったが最後、私の記憶よさようなら〜ってね。

で、これで一度、大失敗をしたことがある。

飲みに繰り出した次の日、目が覚めるともう明るい。
ってか、ここどこ?見たこともない部屋。

・・って、ここラブホじゃん(焦)どゆこと?なんでオレここにいんの?
一体何が起こったんだ?

私は一人で飲みに行くことはほとんどなかったのだが、このときは誰もつかまらなかったので一人で飲みに行っていた。

2軒目までは覚えてる。でもそのあとの記憶が全くない。

携帯を確認するも、通話もメールも全くやった形跡がない。
部屋を確認する。枕元や洗面台をみても、女の子がいた形跡はない。

まさかオレ、一人で来たのか?
・・・ダメだ、全く思い出せない。

それから何とも居心地の悪い、ふわふわした日々を過ごしていた。

そして3日後、一本の電話が。

電話をかけてきたのは先輩の彼女。ちょくちょく愚痴を聞いていたので、またいつもの愚痴だろうと思っていた。

「ただ者くん、これから私たちどうする?」

どうする?なにその問いかけ?

「どうするって何が?」
「土曜のこと」

土曜?オレが記憶をなくした日だ。

「土曜って、オレたち会ったっけ?」
「・・うん」
「何時頃?」
「・・・何言ってんのよただ者くん、夜中にいきなり電話かけてきたじゃない」

電話?オレが?このオレ様が?

そんなはずはない。履歴はなかった。

「ごめん、何を言っているのかよくわからないんだけど」
「覚えてないの?」
「・・うん」
「やっぱり。かなり酔ってたからねぇ。じゃあナシ。今のは聞かなかったことにして」

酔ってた?じゃあやっぱり会ったってこと?
なぜ?

というより、オレから彼女に電話するなんてことがあるだろうか。ちょっと信じられない。
そしてなぜ履歴がない?公衆電話なんて絶対に使うはずがない。
一体何が、何が起こったんだ・・・

数年後、彼女はその先輩と結婚した。
そして結局、この事件は迷宮入り。

この事件の真相を知っているのはこの世でただ一人、彼女だけ。

でも私にも一つだけ、断言できることがある。

それは、『そこに間違いはなかった』ということ。

未だに不可解で疑問が残るこの事件。
それまで、私から彼女に電話したことは一度もない。好意を寄せていた訳でもない。
私から電話したのであれば、なぜ履歴がなかったのか。携帯があるのに、公衆電話なんて絶対に使うはずはない。

おそらく、私から電話したという点に関しては、彼女は嘘をついているのだと思う。あのときの電話のちょっとした沈黙が、私にそう推測させる。
おそらく何かしら、嘘をつかなければならない理由があったのだろう。

まぁいずれにせよ、私はこのときから、記憶がなくなるほどに飲むのは絶対にやめよう。そう心に誓ったのだ。

・・ってか、なんでオレはラブホにいたんじゃあ!!

この真相だけはどうしても聞きたい。
でも聞けないただ者が、そこにはいるのであった。
【89】

背けた心  評価

ただ者 (2020年06月08日 12時35分)

(とある年の2月の書き込み)

受験シーズンですね。みんな色んな思いを胸に受験に臨んでいることと思います。
頑張ってほしい。

私にとって受験と言えば、私生活に影響を与えることは何一つなかった。

受験勉強なんてしたことないし、受からなければ別に高校なんて行かなくていいやと思っていたし。

私は就職するのにも別に苦労なんてなかった。でもやっぱり今は厳しいんでしょうねぇ。うちに入ってくる新入社員も高学歴が多いですし。

下地がないとステージにも上がれない、みたいな。

私のときは学歴なんか関係なく、能力さえあればいくらでも這い上がれた、そんな気がします。
今はどうなのかよくわかりませんけど。

高校には遊びに行ったようなもんです。勉強なんて一切しなかったし、好きなことしかやってなかった。

気の向くままにやりたいことをやり、一切の制限を受けることなく自由に過ごしていた。

一見このムダに過ごしたような3年間、実はムダではない。

多分ですが、この3年間のやんちゃな経験が、社会の荒波にも耐えうる土台になってるんじゃないかなぁって。

若い頃は残業なんて一切しませんでした。仕事よりも私生活、遊びのほうが何倍も大事。

基本的にその思いは今も変わっていませんが、当時は、仕事が遊びに影響してくるようになったらオレも終わり、そんな風に思っていたのかもしれません。

だから周りなんて気にせずいつも5時ピンしてました。当時の流行りの言葉で言えば、5時から男(笑)パチンコ屋に一目散。

一応、自負はあったんですよ。

仕事中は同僚の何倍も頑張ってるし、仕事もこなしてる。だから早く切り上げてもそれは当然のこと、後ろめたいことなんて何一つないって。

何年間もずっとそうやってきました。遊び、その大半はパチンコなんですけど、それしか頭になかったし、それが全てでしたから。

でもようやく私も、その間違いに気づいていくことになります。

「藤島(仮名)、飲み行くぞ」
「まだ帰れないよ」
「その仕事、いつまでに仕上げなきゃいけないんだ?」
「今週の金曜だよ」
「じゃあまだあるじゃねぇか。明日やればいいだろ」
「それじゃ間に合わない。たださんはいいよ、残業しなくても誰も何も言わないから。オレなんかが早く帰ったら、課長や係長に怒鳴られるよ」

・・・藤島

「よしわかった、藤島、今やってること教えろ。オレが1時間でカタつけてやる」

それから約3時間。

「ちょっと手間取っちまったが、これでおおかた目途がついたろ。木曜には部長にあがれるんじゃないか?オレも一緒についてってやっから」
「たださん、ありがと」
「よし、じゃあ飲みに行くぞ」
「うん」

藤島、すごくいい笑顔だな。

もしかしたら、仕事をしてこんなにも充実感があったのは初めてかもしれない。そして、こんな屈託のない笑顔をする藤島を見るのも。

我々は一人で仕事をしているわけではない。組織で仕事をしているんだ。

例えは悪いが、オレや藤島も歯車の一つ。どの歯車が欠けたって、時計の針は動きゃしない。

そう、他人じゃねぇんだ、助けあってなんぼ。当たり前だよな。

・・・いや、本当は気づいていたんだ、わかっていたんだ。
気づかないふりをしてた、見ないふりをしてた。
本当ずるいよな、最低だよな。

優先すべきことはわかっていた。でも、理由をつけて自分に言い訳してた。無理矢理自分を納得させてた。

そう、あまりにも弱い自分。

でも今日、少しだけ前進できた気がする。
ありがとう。
【88】

負け犬の遠吠え  評価

ただ者 (2020年06月08日 07時17分)

私が初めてスキーをしたのは30のとき。初めてリフトに乗ったときは、降りた瞬間にコケてリフトを止めてしまった(汗)
いやぁ、超恥ずかしかったなぁ。いい年こいたオッサンがですよ。

あとから降りてくる人たちが、みんな気を遣って声をかけてくれる。
北海道は寒い分、心があったかい。でも私は、ただただ苦笑いするしかなかった。
でも個人的にはですね、絶対止める必要はなかったと思うんですよ。

「なんてことしてくれたんじゃあ!!」

・・・まぁでも止めなければならないんでしょうね、ごめんなさい。

そう言えば、リフトを止めたオッチャンが、『大丈夫だよ、焦らなくていいから』と言わんばかりに、温かい笑顔で私を見つめていました。
・・・つーか、ただ単に笑っていただけかも(汗)

それからもしばらくは頑張って練習してたんですけど、スキーの楽しさを知る前に、私の心は折れてしまった・・・

「スキーなんてしなくても、生きていけるんじゃあ!!」

・・・ええ、そうですよ、負け犬の遠吠えですよ。

で、それがなにか?

そう言えば、20代前半のころ、スノボが大好きな同僚の女の子がいました。

年末年始の休暇になると、いつもスノボに誘うんですよ、私を。

「ごめん、年末年始はなにかと忙しいから」
「うそばっかり。どうせパチンコなんでしょ」

・・・う、バレバレじゃん(汗)

ってか、なんで知ってんの?会社でパチンコの話なんてしたことないし、オレがパチンコするってことは一部の同僚しか知らないはず・・・

「いや、帰省とかしなきゃならないから」
「じゃあおみやげ買ってきて。丸ぼうろがいい」

いや、つーかそれ佐賀やし。そこは普通明太子でしょ。まぁオレも大好きだけどね。

「わかったよ」

・・・はぁ、なんでこんな嘘ついちまったんだ、オレは(汗)
仕方ない、実家に電話して送ってもらうか。はぁ、面倒くさい。

休暇明け。
「はいこれ、丸ぼうろ」
「ありがと〜、送ってもらうの大変だったでしょ」

・・・う、バレバレじゃん(汗)

ってか、あなた様は神さまですか?私はあなたの手のひらで踊らされてるだけ?

「あっ、そうそう、私、またナンパされちゃったぁ。こんなに可愛かったら、そりゃ男はほっとかないよね〜」

すごく嬉しそうに自慢しております。

皆さま、どうやら本当のようです。ゲレンデではみんな可愛く見えるって噂。

「はい」(手を差し出す)
「なに?」
「オレにはないの?おみやげ」
「あっ、あるよ〜、写真いっぱい撮ったから。あとであげるね」

ほうほう、それはもしかしてとても可愛く見えるという魔法の写真ですな。それはなんとも楽しみな・・・って、ちゃうちゃう!!

だんな〜、それはあまりにも不公平すぎまっせ。

わざわざスノボしに北海道まで行ったんだからさぁ、白い恋人とか六花亭のバターサンドとかさぁ、いっぱいあるじゃないの〜。
視覚じゃなくて味覚くれ〜。

でもこれって、絶対女性の特権ですよねぇ。
私なんかがこれやった日にゃあ、「バッカじゃないの」って一蹴されて終わりですよ。

物や形じゃない。気持ちが一番大事。

・・・とは言ってもねぇ、気持ちはいらん、モノをくれってね。

女性は賢いし、現実的ですからねぇ。押さえるべきところは必ず押さえるあの鋭さ。

・・・結局、夢ばかりみて、地に足がついてないのは私だけですよ(汗)
【87】

記憶と記録  評価

ただ者 (2020年06月08日 00時19分)

(数年前の書き込み)

先月、娘の運動会があった。

そっか、もう1年も経つのか。つーか地元もいつの間にか春になってる。

運動会は秋だろがっ!!って思っているのは私だけです、はい(汗)

で、昨年同様、この日は場所取りから始まる。

・・・なんだかねぇ。

この現状はどうにかならんもんかねぇ。
まぁ別に苦痛でもなんでもないんだけど、なぜか頭の中には疑問符が立つ。

まぁそれはどうでもいいとして、この日の私はカメラマンと化す。
もしかしてこれも全国共通というか大半のパパがそうなのだろうか。

まぁでもそれもどうでもいいとして、実はこの日、私はこの一大任務において大失態をしてしまった。

娘はこの日、4種目の競技に出たのだが、その一つの競技において事件は起きた。

長い棒を4人で持って示されたコースを走ったあと、棒を次の組に渡すというリレー方式の競技なのだが、このときそれぞれの組に一人ずつ、補助者みたいな大人がついていた。

そもそもこのときのビデオ撮りの場所取りが悪かったのだが、その人が死角になってスタートライン付近がちょうど見えなくなっていたのだ。

娘が順番待ちで待機しているときから撮っていたのだが、順番が近づくにつれ前のほうに移動するので、いつしか娘の姿が見えなくなっていた。

まだ何組かあるだろうと余裕こいてたら、私の視界に入ってきたのはなんと、競技を終え、最後尾に並び直す娘の姿。

な〜に〜、やっちまったな。
男は素直に謝罪、男は素直に謝罪。
スマソ(汗)

で、その代りと言っちゃなんだが、かけっこはベスポジで全部撮った。
でも今年は最下位だったけどね。

つーか、運動神経って遺伝しないのかな?いや、妻のを引き継いだのかな?

つーか、足が速いことと運動神経って関係あるんだっけ?
でも大抵、私の記憶の中では、運動神経いいヤツは足も速かった。
まぁ、そんなこともどうでもいいけどね(笑)

「楽しかった」と言ったからそれでいい。それが一番の目的だから。

で、地元での運動会ともなると、やはり知人も多い。

20数人から声を掛けられた。でもその大半は覚えてないというか、記憶にないというか、どうしても思い出せなかった。

「ただ者さんですよね?」
「ええ。あの、どちら様でしたっけ?」
「○○です」
「ああ〜」

・・・と言いながらも、実は誰だかわかっていない(汗)

こういうのが結構あった。人の名前がなかなか思い出せなくなったのは自覚あるけど、こんなにも心当たりがないものだろうか・・・

私がこれまで積み上げてきた経験の糧と財産。その根本は記憶、つまり、覚えているということが前提になる。

もしかしたら、その大事なものが、自分にとって本当に大事なものが、年とともに少しずつ消えていっているのかもしれない。

そんなことを考えていたら少し寂しくなった。

いや、うすうす気づいてはいた。本当はわかっていた。
認めたくないけど、自分の記憶力が少しずつ衰えているという事実。 

そうだ、だから私は記録するようにしたのだ。忘れたとしても、そして忘れてもいいように、ちゃんと思い出せるよう記録するようにしたのだ。
そう、このノートが私の記憶の代わりをしてくれる。だから安心だ。

人間、年とともに色んな能力、機能が低下してくる。だからそれを補うための努力、なんらかの施策が必要となってくる。

生を最大限桜花するため、これからも努力を続けていきたいと思う。
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