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【11】 | RE:腐った刺身 カンパチ (2013年10月04日 18時12分) |
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≪ページ10≫ 生まれ故郷とは反対の極にある世界に連れて行かれ、食物は貧弱で、害虫に悩まされ、暑気に気力を失わされ、およそ快適とは言いがたい場所で眠らされていた。しかも、絶えず危険に脅かされていた。この危険は、通常は、他の戦争のときほど大きなものではなかったとはいえ、予測不能のものであったために、より大きなストレスになっていたと思われる。 この危険は、夜間、兵隊たちが安全だと思っているときに迫撃砲攻撃という形で訪れたし、便所に行く道に仕掛けられた仕掛け爆弾、美しい小道を散策している兵隊の足を吹き飛ばす地雷、といった形で突然襲ってくるものだった。 あの日、バーカー任務部隊がミライ地区で目指す敵の姿を発見できなったという事実も、ベトナムでの戦闘の性格を象徴的に物語るものである。ベトナム戦争の敵は、予期していないときに、予想もしていない場所に出没する敵である。 ストレスに対する人間の反応として、退行のほかにもう一つ、『防衛』と呼ばれるメカニズムがあげられる。広島その他の被災地の生存者について調査したロバート・ジェイ・リフトンは、これを『精神的まひ』と呼んでいる。 我々には、自分の情動的感覚があまりにも苦痛又は不快なものとなったときに、自分自身をまひさせる能力がある。これは単純なことである。 ズタズタに切り裂かれ、血にまみれた死体を一体だけ見たときには、我々は恐怖を覚える。しかし、そうした死体を来る日も来る日も身の回りに見ていると、恐ろしいことが当たり前となり、恐怖の感覚を失ってしまう。恐怖を簡単に無視するようになるのである。 つまり、恐怖を感じる能力が鈍り、もはや現実に血の色が『見えなく』なり、悪臭が『におわなく』なり、嫌悪感を『感じなく』なる。無意識のうちに自分自身をまひさせてしまうのである。 この情動的自己まひの能力は、当然、それなりの利点を持ったものではある。これは進化の過程を経て我々の中に組み込まれたメカニズムであり、我々の生存能力を高めてくれるものであることは疑いない。正常な感覚を維持していたならば気が変になるような恐ろしい状況下にあって、機能や役割を果たすことを可能にしてくれるのがこれである。 |
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