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【770】

RE:お気楽何でもトピ  評価

Normad (2014年05月06日 20時53分)

10章はここまで。

知らなかったけど「こ ろ す」という言葉はピワのNGワードなんだ。

ま、そうだよね。

普通使う言葉ではないな。


 
【769】

無意味な世界、無価値な世界 107  評価

Normad (2014年05月06日 20時50分)

ランダーが間髪を入れず聞く。

「君はレベル5のコントロールキーが何かを知らないのか?」

「知りません。」アルフィーネは答え、それから付け加えた。

「知っているのは、第55エリアのエリアマスターだけです。」

「サイトウはそのシステムの事を知らなかったのか。知っているのに使わなかったのか。」

ランダーは更に質問する。

「マスターはそれを知っていました。でも、多くの人の命が危うくなるので、使いたくないと言っていました。
 それなら無血開城した方が良いと。
 それとあの時、レベル5のコントロールキーは自分の意のままにならない物に変更したと言ってました。」

それを聞いたランダーは、覚悟を決めた様だった。

「奥の手は、ままならないと言う事か。それでは仕方ないな。これから3時間後に全員のプラント退去命令を出す。
 本当は、サイトウの様にもっと早く決断すべきだったのかも知れないな。
 そうすれば犠牲者をもっと少なく出来たのかも知れない。」

ランダーは自嘲して笑う。

そしてアルフィーネを見ながら、こう言い出した。

「私は、君たちを利用しようと思っていたのだ。
 君たちを見張って居れば、いつかレベル5のコントロールキーが見つかって、それを横取りしようと考えていた。
 その為にはウーズバンドのDNA情報を盗んだり、君をシャワー室内で盗撮したりしていたんだよ。
 驚くべき悪党ぶりだろう?すまなかったな。」

「シャワー室の事は知ってました。それは許せない事ですが、他はどうって事ない事ですね。」

アルフィーネは何故か逆にランダーを慰めるように言い、微笑する。

ランダーは、参ったな、と目を手で覆い、それから低く聞いた。

「君たちはどうするのだ?」

「私はもう少し、ここで調べてみたい事があるのです。
 それに私やウーズバンドは敵に知られ過ぎているので、退去するのは難しいかも知れません。」

アルフィーネは答える。いざとなったら、ウーズバンドを背負ってでも逃げるしかないが...。

逃げおおせる可能性は5%もない、と彼女は思った。

3時間後、ランダーは全員への退去命令を出した。

そしてアルフィーネはヨウコと連れだって退去するランダーを見送り、ガダメンツに指揮権放棄を伝えた。

「貴方を自由にするわ。貴方なら敵の包囲を突き破って逃げられる筈よ。」

そう言うアルフィーネに、ガダメンツは不快そうに聞いた。

「お前達はどうするのだ。ここで死ぬと言うのか。」

「死ぬつもりはないわ。ウーズバンドは私が守る。でもその前に、私にはどうしても知りたい事がある。
 マスターは何を思って、何を託して行ったのか。その手掛かりがここにある筈なのよ。
 誰も居なくなった今がそれを調べるチャンスなの。
 だから、貴方ももう行って下さい。」

アルフィーネがそう言うと、ガダメンツは

「オレは邪魔だと言う事か。それじゃ、邪魔者は退散する。死ぬなよ。」

と言って立ち去って行った。




(続く)
【768】

無意味な世界、無価値な世界 106  評価

Normad (2014年05月06日 20時48分)

ランダーは指令室で、思い悩んでいた。

このままでは全滅する。

降伏か、撤退か。

そして、第55エリアの事を思っていた。

恐らくあそこもユビ・シアンの卑劣な謀略で陥落したのだろう。

あの時サイトウは、このような状況になる事を予期して全員を解放したのではないか。


その時、アルフィーネがランダーの許にやって来た。

「お呼びですか。」

ランダーは「ああ、掛けたまえ。」と言った後、こめかみのあたりを指でもみ苦しそうに言った。

「私はここが潮時と思っている。降伏か、撤退か。だが、その前に何か打開策はないだろうか。
 君の意見が聞きたい。」

「敵兵は、プラントから逃げ出そうとする者も容赦なく撃ってきます。
 全員退去するとしても、相当な覚悟が必要でしょう。
 また、降伏しても命の保証は無いと思います。」

「そして、打開策ですが。」

そこで、アルフィーネは言い澱んだ。

いつもはっきり物を言う彼女にしては珍しい事だった。

「どうした。何かあるのか。」ランダーは先を促す。

「室長は、私が何者かご存知なのでしょう。
 じゃないと信じて貰えないと思いますが、私は以前、第55エリアの中央システムのコンピュータ群と
 良く情報交換をしていたのです。」

ランダーは心の中でやはり、と思いながら「それで」と言った。

「その中で、一つの古いシステムからの情報で、あまりに過激な故に今まで一度も使われた事がない
 ディフェンスシステムがあると言うんです。
 それはあまりに過激なので、敵味方関係なくプラント内の人間を消去してしまうそうです。
 そこを上手く、こちら側の人員を退去させながら発動出来ればあるいは敵戦力を壊滅に追い込めるかもしれません。」

「ただ。」

アルフィーネは、ここでまた言葉を切った。

ランダーをそれを促す。「ただ?」

「発動するにはレベル5の権限が必要です。」

と、アルフィーネは答えた。



(続く)
【767】

無意味な世界、無価値な世界 105  評価

Normad (2014年05月06日 20時47分)

指令室に陣取るランダーに、オペレータからの報告が届く。

「D31の送電ルートが破壊されたそうです。
 今のところ迂回ルートで送電を受けていますが、そうやってルートを潰されていくと厳しいですね。」

ランダーはその報告を浮かない顔で聞いた。

敵は、ピンポイントでこちらの弱点を突いてくる。ユビの指示なのだろう。

ランダーはふと、一緒について行ったハイダウエイはどうなったのかと思った。

恐らく、拘束されているかこ ろされてしまったのだろう。


一方、救護施設に運び込まれる人員が増加していた。

犠牲者も増え続けている。

ウーズバンドは、敵兵に撃たれて運び込まれたチェンが息を引き取った事を知って声を無くした。

破壊された設備の修復に出向いて、敵兵と鉢合わせしてしまったようだ。

ウーズバンドはチェンの陽気だった性格を思い出し、心の底から冥福を祈った。


アルフィーネとガダメンツは、戦闘に出ずっぱりだった。

2人が行くと、その場所での戦況は良くなるが、すぐに挽回されてしまう。

ガダメンツは良くアルフィーネに文句を言っていた。

「アルフィーネ、敵はこ ろせ。痛めつけただけじゃ戻って来てしまうんだぞ。」

アルフィーネは「私の主義に反する。」とだけ答えた。

実際アルフィーネが死なせてしまった敵兵は極わずかで、それも死なせようとしたのではなく
結果としてそうなったのだった。

ガダメンツは「ロボット3原則かよ。そんなもの実装されているわけじゃないだろ、お前。」
と分かって居ない者には意味不明の言葉を毒づき、アルフィーネの平手打ちを食らったりした。



(続く)
【766】

無意味な世界、無価値な世界 104  評価

Normad (2014年05月06日 20時41分)

アルフィーネは工作室のロックを解くと、部屋を出て指令室へ向かった。

走りながら思う。

方法は違うのだろうが、第55エリアの場合もこのようにユビは人を陥れたのだろう。

やはり、あの時ここから出すべきではなかった。

その時、誰もいないはずの廊下を走って来る人影があった。

ウーズバンドとガダメンツだった。

アルフィーネは驚いて、思わず険しい口調になる。

「貴方達どうして?ガダメンツどういう事なの。」

ウーズバンドが代わりに答えた。

「アルフィーネさん、僕がお願いしたんです。その、アルフィーネさんを置いて行けないって。」

ガダメンツがその後を続けた。

「ということだ。だが、アルフィーネ。爆弾はどうなったんだ。」

「あれはフェイクだった。考えて見れば、ユビはこのプラントを無傷で手に入れたいんだもの
 爆弾なんて使う訳なかったわ。」

アルフィーネは力を落としたように答える。疲れを知らない筈の彼女から疲労感が漂っていた。

ウーズバンドは「人命を尊重した結果なんだから、仕方ないんです。」と言ってあげたかったが
口にできずに居た。

そこへ意外にもガダメンツが口を挟んだ。

「そこがあいつの鬼畜なところでな、人命を盾に取られたら
 そうせざるを得ないという所を突いてくる。しょうがないさ。」

アルフィーネは少し気をとりなおして言った。

「そうね。反省してばかりも居られない。指令室に急ぎましょう。
 ランダー室長たちも戻って来る筈だわ。」

3人は指令室に行き、そこでランダー達の帰りを待った。

ランダーとヨウコは無事、指令室に帰還した。

その他のコントロールルームのメンバー達も次々と戻って来てはいる。

だが、その中には負傷した者たちも出て来ていた。戦況は良くない。

もともと防御態勢は、敵とは隔壁によって途絶されているという事が前提となって取られていた。

それが数分間と言え隔壁が開けられ、待ち構えていた敵の侵入を許してしまった事で
後手後手の状況になって来ている。

その後、プラント側戦力はコントロール棟に押し込められて行った。

エリアの住民達の中では、逃げだす者も出て来ている。

ランダーはIEMOや他国の軍隊の救援要請を行ったが、航空機や艦船の絶対的な数が少ないこの世界では
遠い地からの派遣には数週間から数か月かかる。

状況的には悪化の一途を辿っていた。



(続く)
【765】

無意味な世界、無価値な世界 103  評価

Normad (2014年05月06日 20時40分)

アルフィーネは、ユビの居住していた部屋に戻って、黒い包装の箱をそろそろと持ち上げ始めていた。

振動を与えずに運ぶ自信はあった。

ただ、振動以外のトリガー、例えば場所を移した場合に爆発する仕掛けがしてある可能性もある。

その場合は諦めるしかない、とアルフィーネは思って居た。

持ち上げても爆発はしなかった。

電子装置が使われていないと言う事は、そんなに複雑な条件で作動するわけではない。

アルフィーネは、少し成功への希望を持った。

箱を持って慎重に移動する。箱自体は適度な重量があった。

丁度プラスチック爆弾が入っている程度の重さだ。

「そんな事でバレる仕掛けなど、あの男が作る訳ないか。」

アルフィーネはそう思い、薄く笑った。

10分後、アルフィーネは工作室に到着し、部屋のロックをして、箱を机に静かに置いた。

包装を慎重にカッターで切り、箱を露わにする。プラスチック製の箱である。蓋がついていた。

アルフィーネは自分の全センサーを使って慎重に分析を行った。

持った時の感じから、バネのようなものがついている装置ではなさそうだ。

音がしない事から時計式のタイマーがついている様子もない。

電位差を検知した事から、電池のようなものが入っている事は分かっていた。

蓋をとったら電極の接触面が切れて爆発する、という事も考えられる。

慎重に金属探知をして、電極のようなものはない、と判断したアルフィーネは静かに蓋を開けた。

そこには導線のついている小さな箱と、粘土状のものが入っている。

導線は粘土状の塊の中に続いていた。雷管に続いているのだろう。

アルフィーネは、粘土状の物資を人差し指で少しすくい、舐めて成分を手早く分析した。

「フェイクだ。」そう叫ぶと、アルフィーネは携帯端末からランダーへ緊急コールをした。

「室長。フェイクだった。すぐ戻って下さい。」

端末の画面に現れたランダーは厳しい顔で言った。

「やられたな。道理で侵入して来た敵は、爆弾など無いかのようにコントロール棟を目指して来ている。
 プラントを守るためにはこのまま非常事態を保持した方がいいのかも知れない。」

「それでは室長や皆が危険に晒されます。再度緊急モード解除を行ってください。」

アルフィーネはそう言いながら、いいようにユビの策略に乗せられてしまった自分を悔いていた。

「そうだな。再び敵の侵入を許す事になるが、一度コントロール棟に引いて守りを固めた方がいいかも知れない。
 アルフィーネ、指令室にもどって指示を頼む。」

ランダーはそういって通信を切った。

事態は悪い方向に流れようとしている。



(続く)
【764】

無意味な世界、無価値な世界 102  評価

Normad (2014年05月06日 20時38分)

アルフィーネはウーズバンドに顔をむけて諭す様に言った。

「ウーズバンド、大丈夫よ。私にはうまくやる自信がある。心配しないで。」

そして、厳しい顔に変わりガダメンツに向かってこう命令した。

「ガダメンツ。私には貴方への指揮権があると言ったわね。
 貴方は信用できないけど、仕方ない、命令するわ。
 ウーズバンドと一緒にコントロール棟を退避して、彼を守りなさい。
 傭兵は命令を絶対に守ると聞く。死んでもウーズバンドを守りなさい。」

それを聞いたガダメンツは渋い顔をする。

「そんなことでいいのかい。オレに爆弾の解除を命じてもいいんだぜ。」

「貴方にはまかせられないわ。箱を運ぶ途中でドカン、でしょう。」

アルフィーネは心なしかおどけて言った。

ガダメンツは、チェっと舌うちする。

「えらく馬鹿にされたもんだな。まあ、いいぜ。この坊主、守ってやらあ。」

ガダメンツはそう言いながら、ウーズバンドを見てニヤリと笑った。


その後、ランダーの指揮によりこの作戦は実行される事になる。

非常事態モードは緊急解除され、コントロール棟から人員が退避していった。


ウーズバンドはガダメンツとコントロール棟を出て廊下を歩きながらも、迷っていた。

アルフィーネさんの命令だけど、このまま行ってしまうわけには行かない。

「ガダメンツさん、この前はありがとうございました。それから...。」

ウーズバンドはガダメンツに言った。

「ん、何の事だ。オレはお前に会った事などないぞ。」

ガダメンツはそうしらばくれながら、ウーズバンドが何か言い澱んでいるのを察知して逆に尋ねた。

「何か言いたい事があるのか。」

水を向けられたウーズバンドは、おずおずと言う。

「僕、アルフィーネさんの所へ戻りたいんです。あの人を置いて行けない。」

それを聞いたガダメンツは渋い表情をして言った。

「それを聞いてやると、オレは命令違反になっちまうんだがな。それにお前死ぬかもしれないんだぜ。」

そう言いながらもニヤリとすると

「オマエ、この前の事で少しは度胸がついたか。おっと、こっちの話だがな。
 だが、そういうの嫌いじゃないぜ。そろそろまたコントロール棟が封鎖される筈だ。
 急げ。戻るぞ。」

と言い、走り始めた。

ウーズバンドはその後に続きながら「この人、本当はいい人なんだ。」と、心から思った。



(続く)
【763】

無意味な世界、無価値な世界 101  評価

Normad (2014年05月06日 20時35分)

4人を別室に呼んだランダーは、打ち明けた。

「正直、私には判断が出来ない。アルフィーネ、君が適任だと思う。意見を聞かせてくれ。」

アルフィーネは、虚空を睨みながら言った。

「2つ方法が考えられます。
 まず、コントロール棟内にある衝撃に強い場所、例えば第3セクションにある工作室に全員退避して
 5時間待つ方法。でも、これは危険すぎる。
 あの場所で人的被害を受けない保障はないし、コントロール棟の中心部が破壊されますからプラントが
 全く機能しなくなります。場合によってはエリアの住民に多くの被害が出るでしょう。」

「もう一つは工作室に箱を運び込んで、5時間待つ方法。
 それなら、爆発してもコントロール棟の中心部が破壊される恐れはありません。
 でも、箱を運ぶ際に爆発する可能性があります。
 なので、コントロール棟内の人員の退避は必要でしょう。
 それに、爆弾への懸念で5時間指令室が機能しないと、その間に敵にプラント内に侵攻されて
 コントロール棟を包囲される懸念があります。
 結局、人の生命の安全を優先させると、選択肢は一つしかありません。」

ここでアルフィーネは意を決したようにランダーを見て言葉を続けた。

「ランダー室長。私はこう提案します。
 一度、非常事態モードを強制解除してコントロール棟内の人間を退避させて下さい。
 そして退避後、再度非常事態モードに設定して下さい。
 敵は襲来するかもしれませんが、室長が指揮を取れば侵入を最低限に抑えられる筈です。
 敵も爆発すると知っているコントロール棟には近づかないでしょう。
 私はここに残り、箱を工作室に運んで無効化する試みを行います。」

ウーズバンドは、アルフィーネの言葉の最後を聞いて息を飲んだ。

危険過ぎる。

思わず声を上げそうになったその時、ランダーが先に声をかけた。

「アルフィーネ、私もそれがベストだと思う。
 だが、君一人をここに残す事は出来ない。責任者として私も残ろう。」

それを聞いたアルフィーネは、微笑んでランダーに言った。

「室長。それは駄目です。貴方にはプラント内の人員を指揮する責任がある。それに。」

ここで、アルフィーネはちらりとヨウコを見た。

「貴方にはヨウコさんが居るではないですか。」

ヨウコは黙ってアルフィーネを見つめた。

なんて人なんだろう、と涙ぐんだ。

ランダーは心の狼狽を隠しながら、分かったと頷く。

「アルフィーネさん。駄目です。危険すぎる。止めてください。」

ここでついにウーズバンドは叫んだ。

いかにアルフィーネさんが超人だろうと、今回だけは危険過ぎる。



(続く)
【762】

無意味な世界、無価値な世界 100  評価

Normad (2014年05月06日 20時33分)

「どういう条件で爆発するのだろう。」

ランダーが呟く。

「わかりません。ですが、時間がくるか、なんらかの衝撃を与えられるか、という2つのトリガーが
 あると考えた方が良いでしょう。」

アルフィーネはそう言うと、ランダーに向かって厳しい表情で続けた。

「あの箱の2/3の容量のプラスチック爆弾だと仮定して、爆発した場合コントロール棟全体に被害が及びます。
 今すぐ、人員を退去させて下さい。」

「それが今は駄目なのだ。非常事態モードにあるので、コントロール棟の封鎖は5時間解けない。
 強制的に封鎖を解く事は可能だが、その場合。ヨウコ?」

ここで、引き継いだヨウコはおずおずと言う。

「強制解除した場合、プラント全体のロックも数分間解除されます。
 つまり、敵の地区の隔壁も開く事になります。
 これは、プラント全体の安全性を考慮した仕様だそうです。」

アルフィーネも既に確認していた。

そこに居る全員の人間に沈黙が訪れる中、ガダメンツが野卑に喚く。

「そら見ろ。ユビの奴は全てお見通しなんだよ。さあ、どうする。
 このまま待って全員爆死するか、敵の侵入を許してでも退去するか。」

アルフィーネも、ユビの策謀に完敗を認めていた。やられた。

自走砲を持ち出す事で籠城の道を選ばせ、守りを固めた敵の内部に爆弾を仕掛け自分は脱出する。

しかも脱出の際に非常態勢をとらせ、こちらの脱出をままならなくさせるとは。

ガダメンツを除く全員が、ランダーを見ていた。

ランダーは腕を組み目を閉じて考えていたが、やがて目を開けるとこう告げた。

「まず、皆、ここは危険だからいったん指令室まで退避してくれ。
 そして、アルフィーネ、ウーズバンド、ガダメンツ、ヨウコ。こっちに来てくれ。」



(続く)
【761】

無意味な世界、無価値な世界 099  評価

Normad (2014年05月06日 20時29分)

ユビの居住していた部屋にあったものは、40cm四方ほどの四角い箱だった。

表面は黒いシートで包装してあり、机の上にちょこんと乗っている。

一番先に到着してその箱を見たアルフィーネは、部屋の入口で後から来たランダー達を入らぬよう制しながら言った。

「電子機器のパルスは感じない。だけど、危険な感じはする。時限爆弾、そういうものか。」

「なんだって。何故、ユビがそんなものを置いていったんだ。」

ランダーが戦慄して叫んだ。

アルフィーネは冷静に答える。

「いいえ、危険な物と決まった訳じゃないです。
 ただ、あの男がジョークでこんな物を置いて行くとは思いません。」

そう言いながらも、ユビが本部から頻繁に受け取っていた配送物の事を思い返していた。

「そうか、あの配送物で少しずつ何かを受け取って組み立てて居たのだな。」

アルフィーネは、ぎりぎりと歯ぎしりをしたい気分だった。

ユビが、自室に籠もって何かをしている気配はあった。

部屋に細工をする可能性もあった。

だが、仕掛けるとすれば電子機器だとばかり思い、スキャンをかけても反応が出ず気にしていなかったのだ。

「いにしえの仕掛けか。」

アルフィーネは自分の記憶の中を探り、そのような物がこの世に存在していた事を確認した。

「アルフィーネ、油断したな。」

突然、野太い大きな声が響く。

アルフィーネが振り返ると、後方に大男の姿を見た。

「ガダメンツ。何故ここに居る。」

アルフィーネは意外さに思わず叫んだ。

ガダメンツは「なんだよ」というように怒った表情で答える。

「何故かって。ふん、お前、オレの指揮権を渡されたんじゃないのか。
 ユビの奴、とうとう本性を現したんだよ。もうIEMOには戻るまい。
 おっと、オレはもうアイツからは解任されているからな。
 だが、まだIEMOには雇われているわけだ。これで納得か?」

ウーズバンドは、ガダメンツの姿を見ながらあの日の事を思い出していた。

この人は信用出来る、そう思った。

アルフィーネは、ガダメンツを睨みながら箱を指さし尋ねる。

「あれは何だ?」

「オレにも分からねえよ。でも、ユビは粘土のようなものを固めてなんか作っていたな。
 そうだ、お前も気づいているのだろう。プラスチック爆弾だ。
 アイツはな、古今東西の兵器にも精通しているんだ。そいつはシャレには見えないな。」

ガダメンツは事もなげに言う。

アルフィーネは呆れて尋ねた。

「では、なぜ貴方はここに居るの。」

「ま、ユビの最後の命令だからな。アイツはオレも消したいのだろう。
 ああ、だがオレがここに居るからと言って、それが偽物って訳じゃあないぞ。
 そんな事思って安心していたら、ここに居る全員、ドカーンであの世行きかもだぜ。」

ガダメンツは、ククっと笑った。



(続く)
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