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【4613】 | RE:駄小説 『オレンジ色をした花びら』 あちちち (2009年09月08日 11時58分) |
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≪9≫ 短時間の中で僕の胸中はかなり高鳴っている 教室の戸を開けた瞬間、そこから一直線上に視線を投げかけると 一番奥に磯里さんが立っていた 窓からこぼれる西日が、 磯里さんのシルエットをくっきりと浮かび上がらせている その光景がより彼女の存在感を増幅させているように感じられ 僕は一種の神々しさをまとっている姿に、数秒釘付けになった エリは彼女から少し離れたところに立っている なかなか教室の中に入ってこない様子に苛立ったのか エリは僕に近づいてきて、 「男ならビシっと…ね!」 そう小声で話しかけてきた つい先ほどまではこんなシチュエーションになるなんて 誰が想像したことだろう 僕は一歩、また一歩と教室の奥に向かって壊れかけのロボットのように ぎこちなさを携えつつ歩き出す ガシャ ガシャ… そんな音が聞こえてくるようだ その歩みがあと2、3歩で目標地点に達しようとしたとき エリは僕に微笑みながら教室の外へと出て行ってしまった その光景はまるで、ヴァージンロードを歩く新婦が 父親から新郎へ受け継がれるような そんな感じに見えた 「さっきは・・・ 部活の邪魔しちゃってごめんね?」 先に口を開いたのは磯里さんだった 「あ、あぁ いやいや、こっちの方こそ」 ボクシングのジャブのような会話を交えたところで 僕は いよいよ決心をして言ったんだ 「磯里さん 好きです。 良かったら僕と付き合ってもらえませんか」 そのとき、彼女の後方から差していた西日が ちょうど彼女の背中と太陽がで重なったことで それまで見え辛かった表情が 僕には鮮明に見てとれた |
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【4614】 |
あちちち (2009年09月08日 12時00分) |
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これは 【4613】 に対する返信です。 | |||
≪10≫ 彼女はなんとも表現のし難い、愛おしい微笑みを僕に向けている 僕が告白してからどのくらいの時間が過ぎたのだろうか 1分…いや 5分…… もっと経っていたのかもしれない 余計な言葉は妙な切迫さに捉えられるだろうと、僕はただ 彼女の唇が動くことを待っていた また太陽が彼女の背中から現れたとき 再度表情が見辛くなってしまったが 確かに彼女は言ったんだ 「いろいろね、聞きたいこともあるけど… … いいよっ」 この瞬間、僕の頭の中に今まで過ごした磯里さんとの記憶が蘇ってきた 初めて交わした会話 文化祭で一緒に絵具で遊んでいたとき 自転車置き場での挨拶 そして、クラス替えが決まったときの彼女の涙。。。 すべての思い出が今、この場面のために用意されていたんだな 僕は嬉しくて飛び上りそうな衝動をなんとか堪え 「ありがとう」 とだけなんとか言えた 数分前まで友達同士だった二人は 今この場をもって恋人同士になれたのだ それが例え第三者に促されようとも 結果オーライ 僕のハイスクール初っ端の告白は、見事「大成功」ということになった 「せっかく藤沢君が告白してくれて、付き合うことになったばかりなのにね でも、もう最終バスの時間が・・・」 互いが次に出す言葉を選んでいる中 磯里さんは教室に掛けられている時計に目をやりながら、そう切り出した 「あ、あぁ そうだね 遠いもんね、家」 僕もその歩調に合わせる 彼女の自宅は前から知っていたけれど、 片道2時間近くかかる遠く離れたところにあった それなのに他の生徒より比べると、遥かに早い時間に登校してきていた まぁ 優等生たる由縁だろう 僕は少し汗ばんだ手をTシャツで拭き、その手を彼女に差し出した 「玄関まで送ってくよ」 彼女は少し戸惑った様子だったが、すぐに僕の手を握ってきた |
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